第285話 とある少女の戸惑い

 

 そろそろ、午後の訓練の時間。

 寝ている子達を起こさないと。


「ミシュカ起きて」


「んー、まだもう少し。もう、体が思うように動かない」


「ほら、そんなこと言ってるとまた、あの人達にどやされるよ!」


「わかってる。わかってるんだけど……」


 ミシュカの気持ちは痛いほどわかる。

 私もこの間怪我した、足がまだ痛むし、休めるものならゆっくり体を休めたい。

 でも、あの人達はそれを許してくれない。


「ほら、ミシュカ。他のみんなも、そろそろ時間だよ、起きて」


「わかったわかった。レノレナノ、あんたって、ホントに真面目だね。まあ、おかげで私達は他の部屋の子達よりは。ひどい目に会わずにすんでるんだけどさ」


「うんうん、ミシュカ姉のいうとおり!」


「んんー、あいたたた。やっばりこれ折れてるかもしれないな」


 みんな明るく振る舞ってるけど、かなり疲れてる。

 それ以上に体のダメージが大きい。

 このままじゃ、誰か命を落とすことだって………。


「レノレナノ、どうしたの? 何か考え事?」


「なんでもない、私も疲れが抜けてないのかな」


「そっか。ぼーっとして、大きな怪我なんてことにならないように、気をつけてよ」


「もちろん、ミシュカもね」


「そうね、これ以上の怪我は私も避けたいところだわ」


「誰か来るよ!」


 ああ、またあれが始まるのか……。

 いや、気を引き締めて、私!

 あと半日頑張ればいいだけだ。


「うーむ、これはあまり良い部屋とはいえないのじゃ」


「ここは、寝るだけの部屋ですからね。私のいた所もこんなものでしたよ」


 ?

 いつもの人達じゃない?

 新しい人が来るって話は聞いてないけど。


「所詮は戦うための道具ですから。ここはただの道具置き場、それ以上でもそれ以下でもありません」


「うーむ、主殿が怒る訳じゃな」


「村長は村長で、過保護過ぎる気もしますが」


「なんじゃ、お主こういう部屋がいいのか? それとなく主殿に伝えてやろうか?」


「いえ、不満は全くありませんので」


「ふむ、であろうな」


 この人達は誰?

 村長?

 一体なんの話?


「さて、戯れはここまでにして、妾達のやるべきことをやるのじゃ」


「ですね」


 やるべきこと?


「皆さん、私達はガンドラル村という村の者です。私達の村の村長の命で、皆さんをあの施設から救助させていただきました」


 え?

 救助?


「実感が全くないかと思いますので、どうぞ一度お部屋の外へ」


 外?

 この人達は一体何を?


「ふむ、よく見れば負傷している者も多いのじゃ。これでは歩くのも大変であろう。どれ」


 !?

 今度はなに?

 って、足の痛みが消えた?


「まだ傷の痛みがある者は? いたら手をあげるのじゃ」


 みんな自分の患部に触れて、戸惑ってる。

 まさか、本当にみんなの怪我が治ったっていうの?


「ふむ、大丈夫なようじゃな。では妾について来るのじゃ」


 もう意味がわからない。

 私達これからどうなるの?

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