第282話 崩壊の武装商団~とある団長の悪夢 その2

「それで相手は? どこぞの軍隊か?」


「いえ、よく分かりません」


「は? よく分からないだと?」


「正体不明の物体が基地内に侵入。無差別に周囲を破壊しています」


 正体不明の物体だと?


「魔獣や魔晶獣じゃないのか?」


「なんとも言えません。ですが魔獣等と違って、明確に基地内の施設や魔動機兵を狙って動いています」


 どういうことだ?

 どこかの国の新型か?

 それとも新種の魔獣か?


「被害状況は」


「現在のところ、防衛部隊の格納庫一棟と防衛部隊の魔動機兵が10機」


 結構な被害だな。

 防衛部隊の機体はある程度の魔獣なら、一機で数体は対処できるはず。

 それが10機、一体相手は何者だ?


「失礼します!」


「今度は何だ!」


「報告します。第一、第二防衛部隊壊滅。第三者防衛部隊も半壊状態です」


「なんだと!? 今、敵襲の報告を受けたばかりだぞ?」


「ですが」


「いや、すまない。報告ご苦労、持ち場に戻れ」


 この短時間でこの被害。

 たとえ竜が相手でも、ここまで酷くはない。

 相手は竜以上の存在だとでもいうのか?


「どうやら大事になっているようですね」


「ラドワンス様」


「お話を伺っていると、相手は中々の強敵のよう。ここは一つお力をお貸ししましょうか?」


 ち、いい笑顔だな。

 だが、今の状況を聞いていると、全滅を免れたとしても被害の規模が尋常じゃないことになりそうだ。

 背に腹は変えられないか。


「申し訳ありません、お力添えをお願いできますでしょうか?」


「わかりました。では貸し一つということで」


 くそったれ!

 とんでもなく高くつきそうな借りだぜ。


「では、この騒ぎを起こす不届きものの所へ参りましょうか」




 おいおいおい。

 なんだこれは!?

 基地の一部が完全な更地になってるじゃねぇか。


「おい、賊はどこにいやがる」


「あそこに」


 ……。

 白い不思議な形のやつが浮いてるな。

 なんだありゃ?


「あんな小さなやつが、これだけの被害を?」


「は。防衛部隊はたった今第三まで壊滅。外の警備に回している第四、第五部隊の主力と、基地内にある魔動機兵わ随時、回している状況です」


「戦況は?」


「こちらの被害のみが増えています」


 あんなちっぽけな奴がそれだけの被害をもたらすのか。

 一体全体なにが起こっていやがるんだ!


「私が出ます。他の機体は一度下がっていただけますか?」


「ですが」


「貴方達では邪魔だといっているのです」


「おい、言うとおりにしろ。その間に部隊の再編を急げ」


「了解しました」


 再編と同時に撤退しかなさそうだな。

 あんな奴がちょくちょく攻め来るような場所じゃ、何にもできやしねえ。


「しかし、奇妙な生き物ですね? いや、生き物ではないのかな? まあいいでしょう。さっさと終わらせて、そのあとじっくりと調べて差し上げましょう」


 全く信用できない奴だが、眷属を名乗るだけあってその強さだけは本物だからな。

 せいぜい時間稼ぎをお願いしますよ、ラドワンス様。


「では、いってまいりばぽ」


 は?

 ラドワンス様!?

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