第281話 崩壊の武装商団~とある団長の悪夢

 

 闇の女神の攻撃で遠征部隊が一瞬で全滅だと!?


「どうかしましたか?」


「いえ。我々の商団の一つから緊急の文書がとどきまして」


「拝見させていただいても?」


「どうぞ」


 なぜ、女神が出てくる?

 意味がわからん、ノーゼノンで一体何があった?


「ふむ、闇の女神ですか」


「どう思われますかラドワンス様」


「私の知っている闇の女神とは姿が異なるようですが。ただ書いてある状況から考えて、普通の相手ではありませんね」


 あの文書の内容が確かなら、確かに普通の相手はない。


「もしかすると、当人ではなくそれに連なる眷属あたりかもしれませんね」


 それにしたって厄介な相手には変わりない。

 できることならこの一件で片がついてほしいが。

 最悪、あの辺一帯を捨てることにはなるかもしれんな。


「それに、例え本物の女神だったとしても、遥か離れたノーゼノンでのお話。この場所を知ることもできませんし、わざわざ探しだしてまで何かをという方でもありませんからね」


「よくご存知ですね。闇の女神さまにあったことが?」


「何度か。とはいっても直接話していたのは我が神ですけどね。私はお供として横にいただけですが」


 直接闇の女神にあったことがあるのか。

 さすがは光の女神の眷属ってところだな。

 まあ、それだってどこまで本当かはわからんが。


「それでどうするつもりですか?」


 さて、どうするか。

 ラドワンス様の言葉通りだとすれば、少なくともこちらに来ることはない。

 だが……。


「私の言葉は信用できませんか?」


 もちろんだ。

 神やらなんやら、そんな別次元で生きてる連中を信用なんざできるかよ。


「いえ、ラドワンス様を信用していない訳ではありません。ただ、私は臆病者なので、いろいろと要らぬ不安を抱えているだけです」


 あの地域は完全に諦めるとして……。

 やはりこのアジトも移すか。

 何か嫌な予感がする。


「どうするか決めたようですね」


 ち、こっちの腹の中を見透かしてるってか?

 まあ、それでも構わんさ。

 殺されないってことは、まだまだ利用価値があると思ってるってことだろ。


「ええ、ここを引き払います」


「なるほど」


「臆病者の戯言と笑っていただいて構いませんよ」


「いえいえ、一つの組織をここまで大きくされた方の判断です。きっと私にはわからない何かがあるのでしょう」


 ち、下々の者にしてはよくやっているってか?

 力があるのはわかっているが、やはり気にくわねぇ。

 自分だって、光神教なんていう胡散臭いことに関わってるだろうに。


「折角足を運んでいただいたのに、申し訳ありません。また、腰を落ち着ける場所が見つかった際には、直ぐにお知らせいたしますので」


「わかりました、それでは失礼します」


 …………。


 なんでいなくならない?

 何時ものように転移しないのか?

 何を考えていやがる?


「これは一体? まさか!? いやそんなはずは。だが現に」


 なんだ?

 焦っているのか?

 顔色ひとつ変えたこともないやつが?


「ラドワンスさ」


「来客中に失礼します!」


 来客中にも関わらず、声を荒げるか。

 これはただ事じゃないな。


「何があった」


「て、敵襲です!」


 くそったれ、悪い予感があたっちまったか。

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