第280話 崩壊の武装商団〜とある商人の悪夢

 

「それでは本日はここまでという事で、商品の方は既に出発しておりますので。またよろしくお願いいたします」


 うーむ、相変わらずここの連中との取引は緊張するな。

 ここの連中は何かあれば武力でってのも平気でやってくるからな。

 背後に強大な武力をもってるってのは、やはり厄介だ。


「いい品があれば、また紹介してくれよ。あんたにとっても旨味のある価格で買わせてもらうぜ」


 ただし、払いは悪くないんだよ。

 むしろよすぎるくらいだ。

 俺にはよくわからんが、こいつらにとって当たりの商品だと普通に売るのの3倍にはなるからな。


「わかりました。また新しいものが入り次第、つれて参ります」


 金に困ってる町村は腐るほどある、次はどこで仕入れてくるか。


「よろしく頼む」


 しかし、多少魔法の適正があるってだけで、こんな値段で買っていくなんざ、一体何に使われてるのやら。

 ま、こちらとしては、はした金にもならないようなものを高額で買ってくれるんだ、何の文句もないけどな。


「ああ、そうだ」


「まだなにかございましたか?」


「あんたとは付き合いが長いから、問題ないと思うが念のためにな。余計なことは考えるな、それとここの話は他所ではするな」


「もちろんでございます」


「ならいいさ。俺達も優良な取引相手を潰したくはないからな」


 怖い怖い。

 これがなければ本当に最高なんだがな。


「それでは失礼させていただきます」


「ああ、気をつけて帰れ……ん?」


 ?

 珍しい、取引中にノックがあるなんて。


「今商談中だ、後にしろ」


「申し訳ありません、緊急事態です!」


「すまねぇ、ちょっと外させてもらうよ」


「いえいえ、既にお話も済んでおりますのでお構い無く」


 緊急事態か。

 あの様子だと、ただ事ではなさそうだか。


「緊急事態だぁ? 一体なにがあった!」


「て、敵襲です!」


「敵襲だと?」


 敵襲?

 下手な国程度じゃ、相手にならないほどの戦力をもつこの基地に?

 そんな馬鹿げた事をするやつがまだいたのか。


「相手の所属と規模は?」


「所属はわかりません」


 報復も考えられるし、所属はわからないようにはするだろうな。


「規模は……一人です」


 は?

 一人?

 一機ですらなく、一人?


「は? お前ふざけてるのか?」


「いえ、本当に一人です。一人で我々の防衛部隊を壊滅させました」


「か、壊滅だと!?」


 壊滅!?

 あり得ないだろ。

 たった一人で襲撃かけて、あの防衛部隊を壊滅させるとか。


「現在、基地内にいる魔動機兵全てに出撃をかけて、対応しておりますが……」


「ちっ、どうやら冗談じゃなさそうだ。おい、あんたもっ」


 じ、地面が!?

 激しく揺れっ。

 か、壁が!


「この建物は危険です、すぐに外に避難を!」


 確かにこれはもう、もたなさそうだ。

 くそ、何がどうなってる?

 まあいい、とにかく今は外に。


 ……なんだこれは?

 何で地面がこんなに大きく凹んで、建物が潰されているんだ!?

 まるで巨大な何かに押し潰されたような。


「おい、上だ!」


 あれは……ハンマーを持った人?

 落下してるのか?


 !?

 近づいた魔動機兵がひしゃげていく……。

 一体なんなんだよ、あれは!


 ま、まさか地面が大きく凹んでいる原因はあれか。

 建物や魔動機兵ですらペシャンコなのに、俺は生身なんだぞ!


「くそったれ!!!」


 駄目だ、間に合わ………。

 …………。

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