第268話 ソラハラヌの感想

 

 しかしこの村はとんでもないね。

 というか、ここを村と呼んでいいのかな?


「司令」


「あはは。もう僕は司令じゃないよ、ラーヴァ君」


「そうでした。頭ではわかっているんですがなかなか」


「まあ、そういうもんだよね。でもねラーヴァ君、その呼び名は本当にやめるようにしてほしいな」


「どういうことでしょうか?」


「それはね」


「それは?」


「その役職名を彼らが僕に押し付けてきそうだからだよ」


「は?」


「これ以上仕事を増やしてほしくないってことさ」


「はぁ」


 ラーヴァ君は体を使った仕事は素晴らいしんだが……。

 まあ、人それぞれだししょうがないか。


「しれーい」


「どうしたんだいパルシラ君。あと僕はもう司令じゃないよ」


「ああ、そうでした」


「それでどうしたんだい?」


「ナルディスナ様がお呼びです」


「わかったよ、伺おう」


「お願いします。あと先輩も一緒にだそうです」


「私もか。わかった」


 しかし、この二人もあっさりとなれたなあ。

 最初にヒダリ君に話をしたときは、この二人が問題になるかと思ったんだが。

 やはり、ヒダリ君の奥様達に鼻っ柱を折られたのが効いたかな?


 ……。

 まあ、あれは折れるよね。

 初めにガツンとなんてかわいいものじゃなかったしなあ。


「どうしたんですか?」


「いや、君たち二人が大人になったなと思ってさ」


「あははは。大人というか、力の差を思い知っただけというか」


「そうですね。今となっては村長の力を見誤っていた自分が恥ずかしいですね」


「まあ、君たちはまだまだ若いからねえ。これから頑張れば……いや、がんばってもなかなか届かない世界もあるね」


「ですねぇ。反抗する気力もなくなりますよ」


「魔動機兵程度では相手にもならない人が、ごろごろしてますからねこの村は」


「村長さんやルドさん達に至っては複数の竜でも歯がたたないし」


 うんうん。

 僕もあの映像はさすがに引いたよ。

 まさか空を覆うほどたくさんの竜達を、たったの四人であっさり殲滅しちゃうからね。


「そういう意味では、ここで働けるように村長に交渉した、司令の判断は素晴らしいものだったと思っています」


「そうそう、おいしいものも食べられるし。お風呂は気持ちいいし」


「うんうん。おいしいお酒もあるしねえ」


「そういってもらえると嬉しいですね」


「ヒダリ君、いつからそこに?」


 しかし本当に彼は普段はふらふらしてるねえ。

 もしかして案外暇人なのかな?

 まあ、奥様達が優秀だし、必要以外のところで口出ししない方がうまくいくのかもね。


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