第267話 後処理

「何度も言っているが我が夫よ」


「何かするときは相談してくださいね」


「本当に申し訳ない。まさかクジラの友達があんなに沢山いるとは」


「クジラ自体はさほど問題ではない」


「そうですね。神代竜を筆頭に竜が普通に遊びに来ていますし、あの程度を気にする住民はこの村にはいませんから」


だよなあ。

まあ、壮大な景色ではあったがな。


「それよりも、それぞれのクジラの中の住人だ」


「さすがにあれだけの数の街や村との交流となると」


そうなんだよなあ。

あのクジラがそうであるように、生きるためにどのクジラも体内に村や街を持ってるんだよな。


「ただでさえガンドラルの運営のほかにも市場やラビリンスに孤児院、そして各国とのやり取りもあって、最近の業務が過大になってきているというのに」


「だが、あのまま放っておくわけにもいかないだろ?」


「そうですねぇ。人の交流、出入りがないというのは最終的には衰退を意味しますしね」


「それで中の人が滅んだ段階で、また別の集落を飲み込むっていうからなあ」


「それはわかっているのだ、わかっているのだがな。だからこそ、我が夫には何かを始める前に相談にしてほしかったのだ」


そう言われてもなあ。

今回の件は完全に想定外だからな。

まさかガンドラル中から、あれだけのクジラが集まるなんて。

相談しててもしなくても結果は変わらなったような?


「反省しているのか? 我が夫よ」


とはいえ、ここで火に油を注ぐわけにはいかない。

気を引き締めないと。

正座説教エンドレスフルコース行きになるからな。


「正座は確定ですよ」



「あなたが全く反省していないのは、お見通しですから」


え?


「今回の件、不可抗力であるし相談の必要があるのか?と思っておるだろう、我が夫よ」


なんで俺の考えがわかるんだ?


「そ、ソナコトナイデスヨ」


「はあ、あなた。あなたがいつも私たちに気をかけてくれるように、私たちもあなたのことを気にかけているのですよ」


「我が夫の考えなど、みえみえだからな」


……。


「なんで都合の悪い部分だけばれるのか、ですか? 簡単ですよ、あなた子どもみたいな顔で楽しんでますもの」


いや、そんなことは。


「あるぞ、我が夫よ」


……。


「まあ、今回は複数の優秀な人材も連れて来てくれたしな。そこは評価していつもの時間より少しだけ減らしてやろう」


少しだけですか……。

まあ少し減るだけでもマシなのか?


「それでソラハラヌさんたちは使えそうみたいだな」


「そうですね。そもそも彼を中心に動いていた組織ですし、とても助かっていますよ」


「俺の感覚だと二人くらい、絶対無理そうな人がいたんだが」


「ふん、あの程度。我が夫の脅しが弱かっただけだ。きっちりと我の方でしつけておいたからな、安心するがよい」


しつけ……。

まあ、うまく収まったんだしいいのか?


まあ、細かいことは良しとしますか。

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