第265話 脅しと売り込み

 お、手紙に気付いてくれたか。


「やあ、ご招待ありがとう」


「いえいえ、急なお招きに応えていただきありがとうございます」


「それで、一体なんのようかな?」


「変な方向に暴走されないように、しっかりと犯人が登場しておこうと思いまして」


 俺の勝手な思い込みだとは思うが。

 この手の組織ってのはなぁ。

 恨み辛みに妙な理屈をつけて、全く関係ない人達に迷惑をかけたりしそうだからな。


「それはそれは。僕らとしても、犯人がわかるのは喜ばしいかぎりだよ。ただ犯人が出てきた以上は、盗られたものの返却と、それなりの仕返しをしたいところではあるけどね」


「ご遠慮したいところですね」


「そうは言ってもねえ。こちらもはいそうですか、ともいかなくてね」


「そちらと言うよりは、あなたがでしょうか?」


「その通りだよ。これだけの組織と資材を揃えるのに、どれだけの時間とお金を要したと?」


「さあ、私にはわかりかねますね。ですがそれを言うなら、あなた方がクジラに襲わせた村どうですか? ガウンティの街は?」


「ふむ。どうやら君はあの村の関係者のようだね。そういう意味では申し訳ないことをしたとは思うが」


「なるほど、自分達が村を襲わせたという認識はあるのですね。ありがとうございます、これで遠慮はいらなくなりました」


「は?」


「拝借したものは、全て賠償という事でいただいておきます。あとは……」


 うーん、これくらいでいいか?


「は?」


 あれ、反応が今一だな。

 この変な建物くらいのクレーターじゃ驚かないか。

 なら、もう少し大きくするか。


「え?」


 お、よかった。

 流石に倍の大きさのクレーターには驚いてくれたみたいだな。


「次はありませんので。よろしくお願いいたします」


「あっはははは、こりゃ参ったね。どうやら君と僕では役者が違うようだ」


「こんな穴なんだってんだ! いいから、さっさとドゥナラルーガを返せ!」


「落ち着きなよ、パルシラくん。こういう時の、意味のない強がりは命に関わるよ」


「司令」


「その一言が組織全員の命を危険にさらすとわかっていても、まだ続けるかい?」


「いえ、申し訳ありません」


 この司令さん、切り替え早いな。

 さっきまで、あれだけ出てた殺気も引っ込めるし。


「話が早くて助かるよ。えーと、お騒がせしてしまって申し訳ないね」


「いえ」


「君の忠告は受け取った。その上で相談なのだが」


「なんでしょう?」


「僕らに仕事を紹介してくれないかな?」


 いきなり仕事を紹介しろときたか。

 切り替えが早いの通り越して、無茶苦茶な人だな。

 でもまあ面白そうな人でもあるが……。


「君に全てを持っていかれてしまったからね。今すぐ組織のみんなを賄うと、なるとなかなかきびしくてね」


 どうするか。

 うーん……。

 よし!


「わかりました。確約はできかねますが、仕事を得る機会を作るくらいはしましょう」


「助かるよ。そうだ、まだ自己紹介をしていなかったね。僕はテージュラ・ソラハラヌ」


「私はサシチ・ヒダリ」


「それではヒダリ君いや、ヒダリ様でいいのかな。よろしくね」


「どちらでもかまいません。後日、担当の者を連れてきますので」


「わかった。よろしくね」


「それでは失礼します」


 さて、またやっかい事をと怒られるかな?

 でも仕事できそうな人なんだよね、ソラハラヌさん。

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