第264話 とある組織の盗難被害
建物全体が騒がしいな。
なにかあったのか?
「先輩?」
「いや、なんでもない。兎に角、司令の元に急ごう」
「失礼しました」
今のは研究室の?
「司令」
「開いてるよ」
「失礼します」
「この騒ぎ、何事ですか?」
「うーん、なんと言えばいいのか」
「?」
「どうやらこの施設全体が盗難にあったようなんだ」
「は?」
盗難?
この施設が?
「うん、そういう反応になるよね。でもね、現実としてありとあらゆる物が持ち去られているんだよ」
「ありとあらゆる物とは?」
「文字通りだよ。研究室の機材も格納庫の部品も書庫の書物も金庫の軍資金も何もかもだ」
「犯人は?」
「さあ?」
「意味がわからないのですが。仮にもここは道もない山の中、それだけの物をどうやって運び出したのでしょうか?」
「どうやったんだろうね?」
「司令、ふざけている場合では」
「もちろんその通りだよ。なんせ、僕らは一番近くの街に行くのにも一苦労しそうなんだから」
「は?」
「言っただろう、格納庫も全て空っぽだと。移動手段が全くなくなってしまったんだよ」
「そんな……」
「それよりもすぐに戻って来たってことは、何かあったんじゃないの?」
「そうでした。私達の魔動機兵が出てこないのですが」
「は? まさか、魔動機兵まで盗られたっていうのかい?」
「まさか」
「いや、ここまでくるとそれもありえるよ」
別空間にある魔動機兵を?
流石にそれは。
「ザルサルシュ」
「司令?」
「うん、僕の魔動機兵も反応しないな」
「司令も魔動機兵を?」
「一応ね。いざって時に、僕だけ見てるわけにはいかないでしょ。まあ、出てこないのならあんまり意味はないけどね」
「これは一体……」
「さあ、なんなんだろうね。ただひとつ言えることは、僕らはほぼ全てを失なったってことかな」
「そんな、でも」
「うん、パルシラくん。信じられない気持ちはよくわかるよ。でもね、現実の問題として、僕らには何も残っていないんだよ」
一体何が起こった?
つい先ほどまでは全てあったはずなのだ。
それがこんな……。
「これはさっきの彼が原因なのかもしれないね」
「あの男がですか?」
「うん、だって彼言っていたでしょ。貰うものは貰ったしって」
「まさか、奴が貰ったと言ったものが」
「多分そういうことだと思うよ」
「失礼します」
今度はなんだ?
「どうしたんだい?」
「食料庫にこんなものが」
「多分彼の置き土産なんだろうね。ありがとう、持ち場に戻っていいよ」
「失礼します」
箱と手紙?
「彼の置き手紙か。一体何が書いてあるのやら」
くそ、ここまで舐められるとは。
あの男次にあったときは!
「ふむふむ、外に出ろって書いてあるね。じゃあ、外に出てみようか」
「危険では?」
「大丈夫じゃない? なんせ僕には優秀な部下が沢山いるから。ね、ラーヴェくん」
な!?
「どうなの?」
「もちろんです、お任せください!」
「じゃあ、いこうか」
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