第257話 村への誘い

「ヒダリのダンナ、笑ってる場合じゃないよ!」


「いえ、すいません。なんというかにぎやかで良い村だなと」


「お、シアの男はいいこというね。なんにもない村だけどここはいい村だよ。気に入ってくれたかい?」


「ええ、とても良い村ですね。えっとデアさんでよろしかったでしょうか?」


「そんな堅っ苦しい言葉。デアばあでいいよ」


「ちょっ、デアばあ。この人はガウンティの女王様よりも、さらに偉い人なんだよ」


「おやまあ、シアはお姫様になるのかい?」


「だから違うって言ってるだろ!」


 レシアさん、愛されてるねぇ。

 まあ、それ以上におもちゃにもされてるけど。


「デアさん、村の方には本当に被害はなかったのですか?」


「そうだね。唯一の被害といえば、この村は漁村なのに、村のそばから海が失くなっちまったことかね」


 確かに、漁村なのに漁ができないのは困るよな。


「それに漁村と言っても、漁をしてるのはシアの一族だけなんだけどね」


 あの海じゃな。

 魔動機兵無しじゃ、なかなか厳しいよな。


「普段の生活に関して、特に不便はありませんか?」


「無いね。それよりもここに来てから、外敵に怯える必要も失くなって助かってるくらいだよ」


 空飛ぶ鯨にとりついてクジラの口の中に入る。

 無理だな、ハードルが高すぎる。

 これは確かに、外敵はなかなか入ってこれないだろうな。


「ただね。今は蓄えもあるしなんとかなってるが、外から人も物も入ってこないとなると、遠くない未来に限界がくるのは目に見えてるね」


 その辺もしっかりと認識済みか。

 さて、こちらの話にのってくるかな?


「デアさん、確認したいのですが。もし、今あげた問題が解決されるとしたら、村がここにあることは問題になりませんか?」


「外との繋がりが戻るなら、特に問題は無いね」


「それでは提案なのですが、デアさん、このクジラごと私達の村に来るつもりはありませんか?」


「ヒダリのダンナ?」


「どういう事だい?」


「そのままの意味です。私達の村に来ていただけるのなら、外部との交流に関しては簡単に解決できます」


「確かに、現にあんたは外からここに来ているみたいだしね」


「はい。勿論お断りいただいたからといって、皆さんをこのままにはしません。村は捨てることになってしまいますが、皆さんを外にお連れすることは可能です」


「ふむ、どちらも悪くない話だね。だがもしここに残ったとして、この村の収入はどうするつもりだい? シアが漁をできなければ、この村はいずれ干上がっちまうよ」


「収入面に関しても、私の村には農作業を初め、沢山の仕事がありますので」


 ホントにな。

 人手がどれだけあっても、全然足りないからな。


 さて、デアさんはどう動いてくるかね?

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