第255話 とある漁師の思いと涙
待機?
どういうことだい?
「ヒダリのダンナ、言っている意味が分からないんだけど」
「うーん、どういう意味と言われても。そのままの意味ですとしか、まあ見ていただければ一目瞭然かと」
見るってクジラをかい?
……。
たしかに、街の前でおとなしくしてるね。
さっきはガウンティの街に向かってきていたはず。
「話が分かる方で助かりましたよ」
は?
「まさかクジラが話を聞いたってのかい?」
「ええ」
……。
この人は一体何を言ってるんだい?
「これから詳しい話をするつもりなのですが、レシアさんも一緒にいきましょう」
???
「よいしょっと」
な!?
またこの格好かい!?
……。
信じられない。
ヒダリのダンナとクジラが話をしている。
聞いたことがない言葉だから本当に話をしているのかはわからない。
だけどアタイには話をしているようにしか見えない。
しかし、生身一つでクジラと対峙してるはずなのに、全然恐ろしくないのはヒダリのダンナの傍だからなのかね?
こうやって親父以外の男の人を近くで見るのは初めてだけど……。
……。
「レシアさん」
……。
「レシアさん?」
は!
「す、すまない。ヒダリのダンナ」
まずい、アタイとしたことが。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
「レシアさんのサヒナ村の件なのですが、みなさん無事だそうです」
え???
「ヒダリのダンナ、アタイの聞き間違えじゃなけりゃ村のみんなが無事って」
「ええ、無事だそうです」
「ほ、本当なのかい!?」
「それを確認するつもりなのですが、場所が場所なので……。一緒に行かれますか?」
「もちろん! みんなに会えるならどんな所にだってついていくよ!」
「わかりました。ではお願いします」
は?
クジラが口を開けた?
まさか!
「クジラの中に入ります」
これがクジラの中……。
なんでクジラの中に空があるんだい??
意味が分からないよ!?
それにあまり生き物っぽくないね。
どちらかというと洞窟の中とかそんな感じだ。
「レシアさん大丈夫ですか?」
「ああ、さすがに平気だとまではいいきれないが、今のところ問題ないよ」
「なにかあれば私が守るので、安心してください」
「な!?」
守る。
アタイを?
ヒダリのダンナが。
「レシアさん?」
「なんでもない、なんでもにゃいよ!」
あ。
「わかりました、なにかあれば言ってください」
ヒダリのダンナはこんな風に笑うんだね。
なんでもポンポンこなすとんでもない人だけど、笑うと案外、子どもなんだねぇ。
「ん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
「レシアさん、見えてきましたよ」
確かにあれはサヒナ村。
村のみんなも見える。
ああ、本当に無事だったのかい。
ちくしょう、目が。
ヒダリのダンナがいるってのに。
「いきましょうか」
「ああ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます