第253話 とある漁師の狂気と恐怖

 

 やつだ。

 みんなの仇!


 許さない!

 許さない、許さない!

 許さない、許さない、許さない!


 落とす。

 落とす。

 落とす。


 クジラはアタイが落とす!


「出てこい、レヴァン!」


 いくよレヴァン。

 アタイ達の一番でいくよ。

 出し惜しみは無しだ!


 落ちろ、クジラぁぁぁああ!


 !?

 銛がはじかれた?

 何者だい?


 まあいいさ、ならばもう一発!


 ち。

 これもはじくかい。


 アタイの邪魔をするやつ!

 クジラの前に。


「まずはお前だああああ!」


 くそ、ちょこまかと、鬱陶しいね。


「そのような単調な攻撃が私に当たると?」


「な、声? どこから?」


「あなたのような野蛮で粗暴な方にそれはふさわしくない」


「うるさい! アタイの邪魔をするなぁ!」


「はあ。闇雲に拳を振るうだけで、何ができると?」


「ならこれでどうだい!」


「たとえ武器を携えた所で、その程度では……。やはり、あなたにそれは相応しくない」


「邪魔だああ!」


「はあ」


「な、足が!? なんだいこりゃ?」


「私の剣ですよ。次は腕です」


「く」


「もう片方の足ももらいますよ」


「が」


「さあ、あとはあなたをそこから引きずり下ろすだけです」


「くそ、動けレヴァン! やつをみんなの仇を討つんだ!」


「それもさせる訳にはいきません、まあ、あなた程度ではここまでですがね」


「レヴァーーン」


「いい加減うるさいで……? なにごとですか? 機体が」


「ふ・ざ・け・る・な・よ、お前ら」


 こ、この声は。


「あなたは何者ですか、私のニーウィアになに、ひぃ!?」


「少し黙ろうか。次に口を開けば消すぞ」


「ヒダリのダン、ひぃ!」


 さっ、殺気が。

 カカか、からだが。

 震えが止まらない。


「レシアさん、あなたは一体なにをしたいのでしょうか?」


「む、村の仇を」


「そうですね、あなたの村を飲み込んだクジラを討伐したかったんですよね」


「あ、ああ。ヒダリのダンナも協力してくれるって」


「ええ、言いましたよ。ですが、あなたが暴れる後始末を引き受けた覚えはありませんが?」


「何を言って」


「回りを見てみろよ。あんた達が暴れてくれたお陰で、どれだけの家屋に被害が出たと思ってる?」


 回りを……!?

 な、家が。


「てめえの仇のことばかりで、回りが見えなかったってか?」


 ???

 どういう事だ?


「これをアタイが?」


「? まさか覚えていないのか?」


 たしかクジラを見て……。

 目の前が真っ赤になって。

 ……駄目だ。


「すまない、クジラの姿を見かけてから今までのことが」


「わかりました、とにかく一度その機体から降りてください。嫌とは言わせません」


 !?

 こ、これがヒダリのダンナ……。


「わ、わかったよ」


 この殺気、圧力。

 体の震えが止まらない。


「お話が通じるようで、助かります」


 クジラなんざ目じゃないね。

 これに逆らっちゃ絶対駄目だ。


「先輩から離れろー!」


 魔動機兵!?


 どこの馬鹿だい?

 空気を読めないにも程があるよ!

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