第248話 漁師の願い

「? ああ、腕を持っていかれたのはアタイじゃないよ。アタイの乗る魔動機兵だ」


 なるほどな。

 確かに魔動機兵なら魔獣の出る海での漁も可能かもしれないな。


「なんだい? 魔動機兵をおかしなことに使ってることに驚いたのかい?」


「いえ、私の村でも魔動機兵が農業をやっていますし、素晴らしいことだと思いますよ」


「農業! こいつはいい、アタイ以外にも魔動機兵を面白いことに使うやつがいるとはね」


「おほめ頂きありがとうございます。漁業での利用も素晴らしいことだと思いますよ」


「ありがとうよ。っと話がそれたな。それで結局、奴には逃げられちまったんだが。それでも目印になるものは残せた可能性が高いんだよ」


「あなたの刺した銛ですか?」


「ああ、海にいる大型の魔獣用のやつを思いっきりぶっさしてやったから。ちょっとやそっとじゃ抜けないだろうし、抜けたとしてもそれなりの跡が残るはずだ」


「その目印があるクジラを討伐してほしいと」


「ああ。腕が取れなかったとしても、アタイじゃあれ以上はどうにもならない」


 暴走しやすい人かと思ったら、冷静なところは冷静なんだな。

 まあ毎日の要請も十分暴走なんだろうけど。


「だが飲み込まれちまった村のみんなの仇は何とか取りたい」


 自分ができることとできないことの分別もある。


「アタイのわがままだっていうのは十分承知だ、それでも」


 無理難題を言ってるっていう認識もあるか。

 きちんと話を整理できればこんな感じに落ち着いてくれるんだ。

 根は悪い人ではなさそうだな。


「わかりました]


「!?」


「良い結果をご報告できるかわかりませんが、やってみましょう」


「本当かい!?」


「ええ」


「すまない!」


「いえいえ」


「こんなことを頼んでおきながら満足な報酬も用意できないし」


「そこも気にされなくても大丈夫ですよ」


「そうだ! こんな田舎女だけど下働きくらいはできるかもしれない、なんならどこかに売り飛ばしてくれてもいい」


 いや、そこまで気にしなくても。

 クジラの素材やなんやだけでも十分報酬になるし。


「報酬はお気になさらなくても大丈夫ですよ」


「だけど」


「ああ、それとレシアさんは私にとっては十分魅力的ですよ」


「な!?」


『あーあ』


「なんだよ、ポピー」


『しーらない。私、一回ガンドラルに戻るね』


「おう、ついでに博士か教授を呼んできてくれ」


『はーい』


 さて、クジラ探しか。

 頭に銛、もしくは負傷しているクジラねぇ。

 そもそもどの辺にいるんだろうな?


「レシアさん」


「……」


 ?

 どうした?


「レシアさん」


「は、ひゃい」


「クジラの逃げた方向を教えてもらえませんか?」


 とりあえずは、わかるところから地道に行くしかないかね?

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