第247話 事件の経緯
疲れた。
いきなり切腹騒ぎとか。
話を聞く前から、一大イベントだった。
「本当に申し訳ありませんででした!」
「いやもう気にしていませんので、そろそろ頭を上げていただけませんでしょうか?」
「ですが!」
話が前に進まねえ。
まだ前の態度のほうがやりやすいんだけど。
『ふふん、今頃謝ったって遅いのよ』
いや、全然遅くないからな。
といかポピーがなんで偉そうなんだよ。
「シアグラデ・レシア。もうよいだろう、陛下も困っていらしゃるぞ」
「は!? 重ね重ねご迷惑を! 本当に申し訳ありません!」
いやもうそれはいいから。
ノーナさん苦笑いしてる場合じゃねえよ。
話が全くすすまねえ。
「レシアさん、あなたのお気持ちはわかりました。ですがいつまでも謝罪されているだけでは、あなたが訴えていたクジラ討伐のお話が全く進みません」
お、謝罪が止まった。
あと一押しか。
「あなたの訴えに協力しようと思っている者としてのお願いです、どうか頭を上げてお話を聞かせてください」
頭が上がったか。
「やっとこちらを見ていただけましたね。それでは改めましてガンドラル村の村長、サシチ・ヒダリと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「サヒナ村のシアグラデ・レシアだ……です」
ふう。
やっと話が聞けるよ。
「それではレシアさん、今回の詳しいお話を聞かせてください」
「わかったよ……わかりました」
「あの無理に言葉をなおされなくても大丈夫ですよ。話しやすい話し方でお願いします」
「いいのかい? じゃなかった。よろしいのですか?」
「無理に言葉を選ばれなくても私は気にしませんので。どうかいつも通りにお願いします」
別に相手を馬鹿にしてるわけでもなさそうな感じだし。
いちいち話が止まるのもあれだしな。
「わかったよ。それじゃあ村が襲われたときの話をするよ」
「お願します」
「アタイたちの村は、特に名物もなく海に出て普通に魚を獲って生活している小さな漁村だった」
海に出ての漁を生業にしている時点で普通じゃないような。
たしかこの辺の海って結構危険だったよな?
ってことはそれなりに腕の立つ人たちが多い村だったてことか?
「あの日、いつものように漁の準備をしてい時だった。はるか彼方に浮かんでいたはずの奴が、大きな鳴き声とともに村に向かって突進してきやがった」
またえらく急だな。
「それはなんの前触れもなくですか?」
「ああ」
とりあえずのところは原因不明ってとこか。
「奴は大きな口を開け村につっこむとそのまま村を一飲みにしやがった!」
ん?
一飲みにされた?
破壊されて壊滅したわけじゃないのか?
「アタイは漁の準備中だったから、何とか逃げることができたが、他の連中はみんな……」
「そのクジラに飲み込まれてしまったと」
「ああ」
「なるほど。それでそのクジラは」
「なんとかみんなを助けようと頑張ったんだが、いかんせん大きさが違いすぎる」
まあそうだろうな。
「奴の頭に銛を突き刺したまではよかったんだが」
生身一つでなかなかやるね。
「そのまま腕を持っていかれちまってね」
は?
腕?
どういうことだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます