第244話 美酒
昨日のあの態度から、なにがあった?
急展開の理由がわからん。
「サベロー、どういうことだ?」
「詳しいことは俺もわからん。今日の朝一で俺達の宿に、城からの使いが来てな。こちらの提案を受け入れたいってよ、詳しいことはこれを村長に渡してくれって」
とにかく中身を見てみるか。
うん、まあ、色々書いあるんだが。
……。
「なんか微妙な顔だな。何か変なことでも書いてあったのか?」
「いや、まともなことしか書いてないさ。最後の一文以外はな」
「は? どういうことだ?」
「読んでみるか?」
「いいのか?」
「大したことは書いてないからな」
「どれどれ」
……。
「ああ、えーと、まあ、良かったんじゃないか?」
「悪くはないさ。理由が微妙なだけでな」
「例え理由が酒だったとしても、無駄に戦争やら殺し合いになるより、よっぽどましだろ」
「サベローの言う通りなんだがな。だが土産の酒一本で、ここまで態度が変わるもんなのか?」
「酒自体が、そうそう簡単に手に入るもんじゃないしな。ましてや、うまい酒となると国を動かしてでも欲しくなるんじゃないのか?」
そんなもんなのかね。
「美味しいお酒は世界を変えます!」
ソシエルさん!?
いつの間に?
というかどこから入って来たんだ?
「細かいことを気にしてはいけませんよ、サシチさん」
いや、え?
ここ、一応村のトップの執務室なんですが。
「大丈夫です」
全く信頼できない大丈夫なのですが。
「問題ありません、それよりも」
というか俺、さっきから一言も言葉を発していないのですが。
「それはですね、サシチさん。私のスキルが理由です」
スキル?
「こちらの村でお酒を作りはじめて、試飲を繰り返していた所、一定以上のお酒を飲んだときにだけ、相手の考えが何となく読めるときがあるような気がします」
……。
あるような気がしますって、それはスキルじゃないかと。
しかも一定以上の飲酒時って、ただの酔っぱらいの戯れ言じゃないでしょうか?
「私は酔っていません!」
「酔っぱらいはみんなそう言うんですよ」
「私は酔っていません!」
「それは今聞きました」
「じゃあ、少しだけ酔っています」
……。
なんかもう面倒になってきたな。
とりあえず、話は良い方に転がったんだ、良しとしておくか。
「はあ。とにかく助かりましたソシエルさん」
「いえいえ、お役に立ててなによりです」
「ちなみにあのお酒は誰の魔力で作ってあるんですか?」
「確かクリオネさんだったかしら?」
うん、まあ、なんというかあれだな。
もう本当に疲れたわ。
「美味しいお酒は世界を変えます!」
うるさいよ!
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