第241話 観光城ハイレイン その2

 城の中もか。

 徹底して観られることを意識してるな。

 しかも、廊下以外が全て障壁で覆われてる。


「申し訳ありません、もしかしてここも解放を」


「はっ! 月に一度、人数を限定してですが! 私達がご案内させていただいています!」


 やっぱりか。

 徹底して観光向けだな。

 これ、もしかして地球出身者が絡んでないか?


「こちらが謁見の間になります! しばし、お待ち下さい!」


 この扉も見事なもんだ。

 少しだけ透明感のある鉱石?

 それとも金属なのか?


「なあ、サベロー。こういうのってニノンさんやナノンさんに見せたら喜ぶか?」


「おい、さっきからニノンやナノンの話が出てくるが、いくら村長でもゆるさねぇぞ」


「ああ、そうか、勘違いさせたな。すまない。全然別のことで意見を聞きたかっただけなんだ」


「どういうことだ?」


「この城、外からここまで人が観て楽しむことを徹底していてな」


「そういえば、あの案内役になにか聞いてたな」


「ああ。それでこっちの世界の家族連れなんかが、こういうことに興味をもつのかなと思ってな」


「なるほどな。そうだな、こういうところに来る機会なんて普通はないしな。みんな興味はあると思うぞ」


「そうか、参考にさせてもらう」


 まだサベローの意見だけだからなんとも言えないが……。

 さっきの案内役の話ぶりだと、それなりに需要はありそうだな。


「お待たせしました!!」


 まだ声がでかくなるのか!?

 これはハイレイン女王の趣味なのか?

 体育会系なノリが好きなのかね。


「中へどうぞ!!!」


 み、耳が。


 殺気?

 違うな、なんだこの威圧感。

 発生元はどうやら女王様っぽいな。


 ってえらい顔色が悪いんだが、大丈夫か?


「よ、ようこひょ」


 ……。

 噛んだ。


 ……。


「た、大変申し訳ない。しょ、少々お待ちいただけますか」


 女王陛下引っ込んでいったぞ、おい。

 だ、大丈夫なのか?


「ヒダリ様」


「エチゴラさん、申し訳ありません。面倒事を押し付けてしまって」


「いえ、そこまで面倒なことにもなりませんでしたよ。大事にはなりましたけど」


「まあ、そこは街中に竜ですしね」


「そうですね。あれだけ多くの人々に見られる場所ですと、隠し通すことは難しいでしょうね」


「ハイレイン王国の人達には、申し訳ないことをしてしまいました」


「そう思われるのなら、ここらから先はお手柔らかにお願いします」


「あなたは?」


「初めまして、私はヘイゾウ・ミノハタ。女王陛下の側近のようなものをしております」


「ガンドラル村村長、サシチ・ヒダリです」


「こちらまで出向いていただきながら、申し訳ないのですが女王は体調が優れず。代わりに私がお話をお伺いさせていただきます」


 エチゴラさんが頷いてるってことは問題なしか。


「わかりました。よろしくお願いいたします」


「ではまずは」


 ?


『私の言葉がわかりますか?』


 日本語。

 やはり日本人か。

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