第239話 とある居候の願い事

 

「今日か。大丈夫だろうかヘイゾウ」


 ガンドラル村の村長か。

 あの二人の話を聞いている限り、野心家ではなさそうだが。


「人伝の話だけだと、なんとも言えないな。こっちに来るって言ってるんだ、とにかく会ってみないことにはな」


「それはそうなんだが」


 レーシャはなまじっか実力があるからな。

 想定外の強者が出てくるだけで、ここまで動揺するのかね?


「陛下! お休み中に失礼します!」


「何事だ、騒々しい」


「りゅ、竜が出ました!」


 はぁ?


「この近辺で目撃情報はなかったはずだ。どう言うことだ」


「私も詳しい話はわかりません。現地を確認した者が、謁見の間に控えております」


「わかった、すぐに行く!」


 うーん。

 さっきの弱々しさが吹っ飛んだな。

 竜の方があの二人より、とんでもない存在だと思うんだがな。

 竜なら想定内ってことか?




「面を上げよ。この度の件の報告を頼むぅ、エヴラチゴラ殿!?」


 リーシャ、いきなり動揺しすぎだ。

 というか何でエヴラチゴラさんがここに?


「お久しぶりです、女王陛下」


「何故エヴラチゴラ殿がここに?」


「それはですね。今回の竜騒ぎに、私というか私共の村の村長が関わっておりまして」


 前言撤回だ。

 野心家どうののレベルじゃねえ。

 竜騒ぎに関わる村長なんざ危険以外のなにものでもねぇ。


「どう言うことでしょうか?」


「まずは配下の方の報告を聞いてからの方がよろしいかと」


「わかりました、報告を」


「報告します。城下町にある竜牙亭という飲食店から急遽竜が出現、その際一人の男性が竜を撃退、竜と共に消え去ったそうです!」


「は?」


 リーシャ、気持ちはわかる。

 わかるがその席でその態度は不味いだろ。


「どう言うことだ?」


「今、報告した通りです!」


 駄目だな。

 俺も意味がわからん。


「女王陛下、補足として発言してもよろしいでしょうか」


「エヴラチゴラ殿。私も今の報告で混乱しております、捕捉いただけるのであればお願いします」


「わかりました」


 なるほど、竜の妻の実家に挨拶にいったら親父の竜がキレて暴れたと。

 しょうがないから竜を気絶させてそのまま回収ね。


 ……。

 ツッコミどころが多過ぎて、どこからツッコんでいいのかわからねぇ。

 あり得ねえだろ。


 だが見ていた奴が複数いる。

 だからリーシャのもとにも報告がきた。

 ということは竜がこの街にいたことと、撃退した奴がいることは事実。


「……」


 リーシャも他の奴らも、どうしていいかわからないって感じだな。


「失礼します!」


 今度はなんだよ?


「どうした?」


「ガンドラル村村長、サベローシラ様、お二方が城門にいらっしゃっています!」


 !?


「す、直ぐにお通ししろ!」


 間髪入れずに本人訪問か。

 タイミング良すぎるだろ。

 お陰でこっちは大混乱だよ!


 空気読んでくれ、ガンドラル村村長さんよ!

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