第235話

「あなた落ち着いて下さい」


 この人がジジの母親だよな。

 うん、確かに。

 ごめんなさい、ジジのお母さん。


「ジジ、そんなやつの何処がいいというのだ!?」


「どこって、その、スゲー強い所とか、実はスッゴクや、優しいところとか」


 ジジさん。

 なんとも恥ずかしそうに嬉しそうに話すあなたは、とても可愛いんだが、時と場合をもう少し考えてほしいかな。


「ふざけるなぁー!」


「あ、あなた落ち着いて下さい」


「これが落ち着いて等いられるかぁ!」


「そうだぞ、親父。というか兄貴はオレを誑かしてなんかいないぞ」


「なんだと?」


「そ、その、むしろオレの方からお願いしたというか……」


 ジジさーん!

 火に油を注がないで!


「きっさっまぁああああ!」


 ああ、ジジの親父さんが竜の姿に!

 このままだと周囲の被害が。

 何処が荒事禁止なんだよ。

 店主が大暴れじゃねーか。


「ジジ」


「ああ、兄貴。とりあえずやってくれ」


『許さんぞぉぉぉぉあ』


 はあ。

 やっぱり一発殴ってからの会話になるのか。


『きさぶおぇ』


 よし、気絶したな。

 あとは別空間に収納してっと。


「皆さん、一度跳びます。エチゴラさん、なるべくすぐに戻りますので、それまで言い訳をよろしくお願いします」


「え? 私ですか? ちょ、ヒダリさ」


「行きます!」


 取りあえずは、うちの村でいいか。

 ジジの親父さんはルドにでも抑えといてもらおう。

 しかし、竜族には穏やかに話し合いから始まるコミュニケーションってのがないのかよ?




「おかえりなさいませ、ヒダリ様」


「ここは一体?」


「お袋、落ち着いてくくれ。ここは元々クリ姉の住み処で、今オレ達が住んでいる島だ」


「クリスさんの?」


「ジジの言うとおりです、叔母様。ですから皆さんも落ち着いてください」


 ジジとクリスがいてくれて助かった。

 有無を言わさず、いきなり跳んだからな。

 俺だけだったら、全員気絶させるしかなかったかもな。


「みなさん、ハイレインでの無用の混乱を避けるため、このような手段をとってしまい、誠に申し訳ありません。只今説明があったように、ここは元々クリスの住み処だったところに私達が作った村、ガンドラルです」


「ほう、ではここが噂の」


 噂?


「ダルダロシュ様がおっしゃっていた、竜でも神でも気にせずに滞在できる村ですな」


 うん、まあ、間違っちゃいないか。

 どっちも住人だしな。

 想定外だが、これなら上手く乗り切れそうだ。


「みなさまにも滞在を楽しんでいただければ幸いです」


 ここにはいないけど。

 ありがとうございます、ダルダロシュさん!

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