第236話

 とにかく観光になにりそうなこの流れで押しきる。


「急なご案内となってしまいましたが、よろしければゆっくりと村の中を、見学していただけたらと思います」


 クリス!


「皆様、よろしければ私がご案内させていただきます」


「アスクリス様が? こりゃあ長生きってのもしてみるもんだな」


「是非ともお願いいたします、アスクリス様」


「デロナネスさん、メロゲさん、皆様もどうぞこちらへ」


 クリス、上手く納めてくれたな。

 ありがとう。


「なら、お袋はオレが案内するよ」


「でもお父さんが」


「親父のことなら大丈夫。というか親父程度じゃどうにもならない人が、ここにはたくさんいるからな」


「そうなの?」


「ああ、さっきだって見てただろ? あの親父が一撃だぞ」


「それもそうね。じゃあジジに案内してもらおうかしら」


 ジジのお母さん、結構おおらかだな。

 仮にも旦那がぶん殴られてるってのに。


「でも、ジジの旦那さんは強いのねぇ。私でもお父さんを気絶させるのに、4~5発は必要だもの」


「だろー、兄貴の強さは規格外なんだぜ」


「あらあら惚気かしら? その辺も含めてゆっくりお話を聞かせちょうだいね」


 ……。

 あー、うん。

 まあ、当人が気にしないならいいのかな。


「あ、そうだ兄貴」


「どうした?」


「あのさ、こんなこと頼んでいいのかわからないけど」


 ?


「次の場所が決まるまでで構わないから、ここにお袋達の店を置かせてもらえないか?」


「ジジ?」


「だってよ、お袋。オレが気まぐれで里帰りなんかしなければ、お袋達は今だって普通に店をやっていられたんだろ? オレはあんまり賢くないから、兄貴にお願いするくらいしかできないけどさ」


 あー、確かにあの騒ぎじゃな。

 同じ場所に店を構えるって話にはならないか。

 まあ、物理的に本気で押しきられたら、ハイレインも嫌とは言えないだろうが。


「兄貴」


 普段は我が儘なんか言わないジジのたのみだしな。


「わかった、土地はあるだろうからな。ピョン次郎さん」


「はい、ここに」


「いまの話でナディ、レイラさんと調整してみてください」


「かしこまりました」


「あにきー、ありがとう! やっぱり兄貴は最高だ!」


 おおう。


「あらあら、ジジは本当に素敵な人に巡り会えのね」


「ああ、兄貴はいつだって最高だぜ!」


「あらあら」


 く、ジジめ。

 素直な称賛がちょっとむず痒いぞ。


「ヒダリさん、ありがとうございます」


「いえ、できる限りのことしか出来ませんが」


「それと、こんな娘ですが、末永くよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、これからよろしくお願いいたします」


「あにきー! オレ色々がんばるから」


 おぶっ。


「あらあら」


 とそれはいいとして。


「ゼラマセンさん、ルドはいますか?」


「ここにはいらっしゃいませんが、キョウカ様達と書庫の方にいらっしゃるかと」


「わかりました、申し訳ありませんがルドを呼んできてもらえませんか?」


「かしこまりました」


 取りあえず、こっちはさっさっと片付けてハイレインに戻らないとな。

 もうすぐ行きますから、頑張っていて下さいエチゴラさん!

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