第222話 巴の疑問

 

 いてて。


「ふむ、一撃目をかわせたのはよかったが、避けた後がまだまだだな」


 最近それなりに戦えるようになったかなとは思うけど、ナディさんの方がまだまだ上手だね。


「どうする、続けるか?」


「もちろん!」


「よい心掛けだ」


 やられっぱなしは悔しいからね。

 今日こそは一撃いれてみせる!



 ふうー。

 駄目だったあ!

 やっぱり、ナディさんは強い!


 そしてクリスさんとジジちゃんはもっと強くて。

 その二人が手も足もでないほど強いのがリシャルさん達。

 さらにその上にお爺ちゃんがいて、左の字はさらにその上。


「遠いな〜」


「む?」


「左の字の背中が遠いな〜と思ってさ」


「確かにな。だがその遠さがわかるようになっただけでも、以前よりは近づいている証だ」


「そうかな? うん、そうかも」


 前は左の字の背中が、どこにあるかさえもわからなかったし。


「ほら、サベロー。お前も巴を見習え!」


「勘弁してくださいよ、ナルディスナ様」


「いや、まだまだだな。お前にはなにか余裕を感じる」


「そんな殺生な。こっちは立つのがやっとだっていうのに」


 あはは。

 サベローさん、今日もやられてる。


「皆様、お疲れさまです」


「ルドさん」


「根を詰めるのも結構ですが、ほどほどの休息も大切ですよ」


「うむ、そうだな。では休憩にするか」


「やっと終わった……もう動けない」


「しっかりしろ、サベロー。あの程度で弱音を吐くな」


「あの程度……、弱音……」


 あはは。

 サベローさんはやっぱり面白い。


「ゼラマセン様からお飲み物をあずかってきましたので、どうぞお飲みください」


 やった!

 ゼラマセン さんのお茶って美味しいんだよね。


「沢山ありますので、ゆっくりとご堪能ください」



 あ!

 そういえば、ルドさんなら知ってるのかな?


「ルドさん」


「どうしましたか巴様」


 うーん。

 ルドさんの耳。

 ピクピク動いて可愛いんだよね。

 あれをモフモフしたら……


 っと危ない危ない今日はそこじゃないんだ。


「あの、聞きたいことがあるんですが」


「何でしょうか? 私で答えられることなら」


「ラビリンスで、左の字が言っていたことが気になっていて」


「ふむ」


「死の寸前で復活ポイントの話のときに、死ななくてもその寸前を体験したら、ほとんどの人は心が折れるって」


 何て言うか、まるで経験者みたいな言い方だった。


「左の字はもしかして経験者なのかなって思って」


「ふむ、これは説明するより見てもらった方が早いかも知れませんね。丁度良い機会ですし、他の奥様達も呼びましょうか」


 え?

 え?


「奥様達には一度、本気の我が主を見ていただきましょう」


「本気?」


「ええ、ただし我が主は鋭いお方。少々離れての見学になりますが」


 ボク達が知らない左の字か。

 一体どんな感じなんだろう?

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