第214話

 さすがに魔窟達は落ち着いたようだな。


「やあ、村長さん。今日は一人かい?」


「ああ」


「それにしても、魔窟や魔塔があんなに騒がしいものだとはね」


「しばらくうるさかったのか?」


「そうだね、三日くらいはうるさかったかな」


 結構、長い間騒いでたのか。

 パンナートさんとアシウェスさんには迷惑をかけたな。

 生まれて初めての移動だしなあ。

 それぐらいは仕方ないのか?


「今でも、たまに何か騒いでるけどね」


 まあ、色々と珍しいものもあるだろうしな。

 しばらくはしょうがないか?


「それで今日はどうしたの?」


「いや、この街を運営していく上で、パンナートさんと魔窟達に相談したいことがあってな」


「相談?」


「ああ」


「しかも僕だけでなく魔窟達にも? 一体なんだろうね」


「ちょっと待っててくれ。先に魔窟達に確認してからだ」


「わかったよ。じゃあ、また後で声をかけてよ」


「わかった」


 それじゃあ魔窟達の所に行きますか。




『ヨク来タナ、今日ハナンノ用ダ?』


『一つ確認したいことがありまして』


『ナンダ』


『あなた達の中に入っていく、生物のことです』


『フム』


『中に入った生物が死亡するというのは、皆様に取って利益になるのでしょうか?』


『ナントモ言エンナ』


「どういうことでしょうか?」


『我等ガ取リ込ムノハ生キタ魔力。死ンダモノハ一定ノ時ガタツト、魔力ガ霧散シテシマウ。ソウイウ意味デハ特ニ利益ニナルトハ言エン』


 とりあえずは予想通りか。


『ダガ、死亡シタモノヲ吸収スルコトデ得ラレル情報ハ、我ラニトッテ貴重ナモノダ。次ノ侵入者ヲ呼ビ寄セルタメニナ』


『たとえば、探索者達の武具や持ち物等ですか?』


『ソウダ。ソレラヲ取リ込ミ学ブコトデ、次ノ侵入者ヲ呼ビ込ム餌ヲ、作ルコトガデキル』


 なるほど。

 それならなんとかなるかな?


『アトハ気分転換ノ嗜好品ダナ。タマニハ魔力以外ノモノヲ食シタイ』


 おやつがわりかよ!

 まあ、そっちもなんとかなりそうだ。

 これは上手くいくかな?


『今のお話を伺った上で、お聞きしてもよろしいでしょうか?』


『ナンダ?』


『中に入った者達の武具や持ち物が手に入るのであれば、別に中で死亡する必要はない、と言うことでよろしいでしょうか?』


『ソウダナ。死体自体ハ嗜好品トシテ以外は特ハニ重要デハナイ』


『では、情報が得られ、嗜好品が手に入るのであれば、あなた達の中で探索者が死亡する必要はない、ということでしょうか?』


『ウム、ソウナルナ』


 よし!


『それでは、今までのお話しを踏まえた上でご相談があります』


『ナンダ』


『私達が指定した生き物が死亡しそうになった際に、その身柄を譲っていただけませんでしょうか?』


『ホウ』


 おっと、結構な殺気だな。

 獲物を寄越せって言われて、ニコニコしてるやつもあんまりいないか。

 でもそんくらいじゃ、脅しにはならんかな。


『ク、キ、コレハ!?』


『落ち着いて下さい、まだ続きがあります。身柄を譲って頂くさいには、装備品や持ち物等は全て差し上げます。あくまで指定した生き物の身柄のみを、譲っていただきたいのです』


『ソノヨウナ事ガ可能ナノカ?』


『可能であれば、このお話、ご協力いただけますか? ああ、それと嗜好品に関してですが、毎日三食こちらでお食事を用意いたしましょう。いかがでしょうか?』


『フム、三食カ。以前ノアレモ中々ノモノダッタ』


『いかがでしょうか?』


『ワカッタ、先程ノ条件ガ満タサレルノデアレバ協力シヨウ。他ノモノ達ニ文書ヲシタタメル、暫シ待テ』


 とりあえず第一段階はクリアかね。

 後はルドと教授達次第か?

 ああ、パンナートさん達への説明もあるか。


 やれることから粛々と進めていきますかね。

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