第207話

 サベローと皇帝の邂逅も済ませたし、もらうものもらって帰るとしますかね。


「魔窟へ行くつもりか?」


「ああ」


「ふむ。貴様、魔窟というか城の外を見たか?」


「いや、直接ここに飛んできた」


「本当に非常識な奴だな」


 誰が非常識だよ。

 非常識ってのはな、うちのポンコツ共や爺さんみたいな奴等のことだろうが。


「まあ、話すよりまずは見せた方が早いか。おい、着いてこい」


 城の外でなにかあったのか?




 ……。


「おい、皇帝」


「なんだ」


「なんで城が包囲されてんだよ」


「貴様が原因だろうが」


 俺が原因?

 城を囲ってる連中に見覚えはないぞ。


「貴様に我が軍が敗れたという情報と魔窟、魔塔の譲渡を聞き付けた地方の貴族達が一斉に謀叛を起こした」


「おい」


「まあ、焚き付けたのは協会の連中だろうがな。貴様、ガウンティでなにか面白いことをやっているそうだな」


 協会がらみとなると……。

 素材買い取りと孤児院、治療院あたりか?


「貴様の事業のせいで、この辺一体の探索者が、獲物をガウンティに持って行くようになったからな」


 商売あがったりってか?

 そりゃ、あの買い取り価格じゃあなぁ。

 うちのギルドとは勝負にもならん。


 こっちは福利厚生もあるし。

 多少の距離はあってもこっちにくるだろうな。


「独占状態に慢心して油断してるやつが悪いだろうが」


「まさにその通りなのだがな。それが通じない相手も多いと言うことだ」


「利益を取り戻すために、魔窟や魔塔そのものを手にいれようってことか」


「そうだな。丁度よく私の戦力も大幅に下がったところだったしな」


「はあ、それで俺にどうしてほしい」


「ふん、話が早いな」


 なっ!?

 片膝付きやがった!


「ガンドラルが村長、サシチ・ヒダリ殿。ノーゼノン帝国は貴方の元に降ります」


 は?


「どうかそのお力をもって、この城に身を寄せる民達をお守りいただけませんでしょうか?」


 民ときたか。

 攻め口がいやらしいな。


「おい、頭をあげろ。敬語もいらねぇ。皇帝、いつからこれを考えていやがった」


「ふん、貴様がこの国を後にした直後からだ」


 さすがは一国の主。

 本当に油断も隙もねえ。

 ということは協会の動きも反乱も想定内ってことか。


「狸野郎が」


「タヌキ?」


「腹の中が真っ黒なやつのことだよ」


「ふん。支配者たるもの、民を守るためならそのくらい当然だろう」


 民の為か。

 本音かどうかは別として、間違っちゃいないのかね。


「それで勿論、受けてもらえるのだろうな?」


「はあ、とりあえずそういった分野の担当が二人いるから、その二人次第だな」


「貴様が長なのであろう?」


「家にも家の事情ってもんがあるんだよ」


「ふん」


 はあ。

 とりあえず城の回りに障壁でも張るか。

 後はナディとレイラさんに来てもらってだな。


「ダチキッシュ様! 何処の馬の骨ともわからん輩に降るとは本気ですか!?」


 今度は誰だよ。

 もう、中も外もやかましい国だな。

 めんどくせえ!

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