第206話

「ふん、約束のものを受け取りにきたのだろう」


「ああ、久しぶりだな皇帝」


「約束通り魔窟にも魔塔にも人はいないはずだ」


 追加の稼ぎがふいになったか。

 しっかりと約束を守ってきたな。

 こっちを甘く見るつもりはなさそうってことか。


「ふん、意外そうだな。貴様との約束を甘く見るわけがなかろう」


「わかった、それじゃあもらうものをもらっていく」


「勝手にしろ」


「おい、これだけで終わりなのかよ。俺は必要なかったんじゃないのか? というか元に戻せよ」


 いや、必要だよ。

 生首仲間に生首キングを紹介しないわけにはいかないだろ。


「なんだこいつは?」


 お、流石生首皇帝。

 キングが気になったか。


「あんたの先輩だよ」


「は?」


「は?」


 全く同じリアクションか。

 やっぱりサベローと皇帝は馬があいそうだな。


「おい、村長。きちんと紹介しろよ」


「ふん、何処の誰ともわからん輩に、しかも頭部のみ等。そんなものに名乗る名前なぞないわ」


「な、なんだと」


 む?

 仲良くやれるかと思ったが。

 いや、サベローだけ生首なのがまずいのか。

 同類になれば仲良くやれるか?


「おまえだって同類じゃねーか」


「な、またこれか! おい、さっさと元に戻せ!」


「おい、村長。これに何の意味もないじゃねーか。さっさと俺も元に戻せよ」


 やはりこの二人は似てるな。

 悪態のつきかたも一緒だ。

 早く打ち解けて仲良くやってほしいもんだ。


「おい、村長。なんで仕方がない奴等だな、みたいな顔してんだよ」


「似た者同士仲良くしろよ」


「似てねーよ、何言ってるんだよ」


「いや、おんなじ種族だろ?」


「知らねーよ。おんなじなのはお前のせいだろうが!」


 やれやれ。


「やれやれじゃねぇよ。いい加減にしろよ」


 やはり俺の思考を読んでくるか。

 流石はサベロー。

 キングは伊達じゃない。


「しょうもないこと考えてないで、早く元に戻せよ。話が進まないだろ」


 む、確かに。

 なかなか楽しいイベントだがしょうがないか。


「ふう、やっともとに戻った」


「全くだ。なんで私まで、貴様いい加減にしろよ」


「そんなことより、サベロー」


「そんなことって、お前が原因だろうが!」


 細かいことを気にする奴だな。

 まあ、いいか。


「こちらはノーゼノン帝国皇帝ダチキッシュ・ノーゼノンだ。皇帝、こっちは俺の部下、サベローシラ・ラダヤルだ」


「おい、皇帝ってお前。一国のお偉いさんになにやってんだよ」


「うむ、まさにその通りだ。敗戦国の長とはいえ、もう少し扱いというものがあるだろう」


「危害は一切加えていないはずだが?」


 寝室に穴を空けた以外は暴れてないからな。

 非人道的行為も特にはしていないし。

 契約を交わしたこと以外は寝室の穴以外はこの国に一切なにもしていないぞ。


「さっきのあれを貴様はなんとも思わんのか?」


 さっきのあれ?


「ダチキッシュ皇帝、村長にそれを言っても無駄だ」


「なんだと!? こいつは阿呆なのか?」


 誰が阿呆だよ。


「なぜかはわからんが特定の相手にだけは、この村長はあれをやるんだよ」


「は? 何のためにだ?」


「知らねーよ、それこそ村長に聞いてくれよ」


 エチゴラさんといい、サベローといい、いつの間にか皇帝と仲良くなってるのな。

 やはり生首仲間なのか。


「おい、あの行為に何の意味があるというのだ!」


「なんとなくだな。あと雰囲気だ」


「貴様は本当に阿呆なのか!?」


 誰が阿呆だよ。


「雰囲気とかが大事な時だってあるだろうが」


「貴様はなにを言っているんだ?」


「ダチキッシュ皇帝、それを村長に言っても通じないからな。というかこうなったらどうにもならん、諦めろ」


「サベローシラと言ったか。こいつは貴様らの長なのであろう?」


「ああ」


「なんとかならんのか?」


「どうにもならん、腕ずくも通用しない相手だ諦めろ」


「くそ、私はこんなやつに敗れたのか」


 こんなやつ扱いはひどいだろ。

 というか喧嘩売ってきたのはそっちだしな。


「ダチキッシュ皇帝。色々思うところはあるだろうが、基本的にはまともなはずだ、だから細かい部分は諦めろ」


「だがしかし!」


「国民が無為に虐殺されるよりましだろ? そう思ってたえるんだよ」


 いや、虐殺とかしねーし。

 サベローもひどい言いようだな。


「くそ、くそ」


 そろそろ飽きてきたな。

 他人の悔しがるとこみてもあんまり面白くないしな。

 

 さっさと魔窟達の回収に行きますか。

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