第205話

 そろそろ約束の一月だ。

 ノーゼノン帝国に魔窟を迎えに行かないとな。

 今回は生首の大先輩、サベローを連れていくか。


「おーい、サベロー」


「どうした、村長」


「ちょっと出かけるから、付き合ってくれ」


「わかった。だが何処へ行くんだ?」


 ……。


「いや、黙るなよ。不安になるだろ」


「大丈夫だ、危険はない」


「全く信用できない笑顔だな、おい」


 うーむ。

 サベローのツッコミは相変わらずだな。

 家でもこんな感じなのかね?


「いや、だから黙るなよ。どこ行くんだよ」


「細かいことは気にするな」


「細かくねーよ。目的地もわからず連れ回されるとか、恐怖以外の何ものでもないぞ」


「俺を信じろ!」


「信じられねえよ!」


 疑り深い奴だな。

 まあ、いいや。

 そろそろ出発しようか。


「おい、黙るなよ」


 今回は皇帝のところに直接飛ぶだけだからな。

 別にこのままでも問題ないんだが……。


「明らかによからぬことを考えてるだろ」


「サベロー、俺の考えが読めるとは流石だな」


「こんなところでお褒めの言葉はいらないんだよ。というかよからぬことの部分は否定しろよ」


 次から次へと、サベローは今日も切れてるねぇ。


「何でこっち見てニヤニヤしてるんだよ」


「いや、流石はサベローと思ってな」


「なにがだよ!?」


「だが何時までも、ここで遊んでる訳にもいかないからな」


「遊んでるのは村長一人だろうが! っておい何でまた俺が頭だけになってるんだよ」


 一路、ノーゼノン帝国へ!




 ここには誰もいないか。


「現地に飛ぶだけなのに、何で俺を頭だけにしたんだよ!」


 サベロー、普通の移動の時は生首にされることを受け入れたのか。

 流石は生首キングだな。


「何で俺に尊敬の眼差しを向けるんだよ!?」


『生首キング』


「何言ってるのかさっぱりわかんねえよ。だが明らかにしょうもないこと言ってるだろ!」


 久しぶりに日本語がでてたみたいだな。

 流石の生首キングも日本語はわからんか。

 まあ、いいや。


「おい、それでここは一体何処なんだ?」


「寝室だ」


「寝室? 冗談だろ?」


「いや、寝室だ」


 確かに少しボロいがな。


「天井に大穴があって空が見えるのにか?」


「ああ」


「ドア開けて、入ってすぐに落下しそうな大穴が床にあるのにか?」


「ああ」


「壁に穴が空いていて外から丸見えなのにか?」


「ああ」


「信じられん」


「ちなみにその三つの穴は俺が空けた」


「お前のせいかよ!」


 的確なツッコミだ、サベロー。

 わざわざここに飛んだ甲斐があったってもんだ。


「何でウンウン言ってるんだよ。それよりもいい加減元に戻せよ」


「いや王としては、威厳をもってもらわないとな」


「は?」


「騒がしいやつらだな」


 お、きたきた。

 皇帝と王のご対面だ!

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