第204話 ヘラレントの想い
男女の営み。
凄かったのじゃ。
この体にあのような機能がついていたとは。
他の女神共も、あのような経験はしたことがあるまい。
そもそも女神を娶れる男が、主殿以外に存在するとも思えんしな。
それにしてもナディ達が言っていた覚悟があんなに早く役に立つとは。
忠告してくれたときは半信半疑であったが。
あやつらの予想は恐ろしいほどに当たっていたのじゃ。
そしてあの衣装。
明らかに主殿の我らを見る目が違っていたからの。
あれを考えたのはいったいだれであろうかの?
しかし、惚れた男にああも情熱的に求められるというのは。
しかも主殿、普段はあれだけ荒々しい所があるくせに、とてもとても優しいのじゃ。
一つ一つの所作から、妾を大切に思ってくれることがひしひしと伝わってくる。
あれは狡いのじゃ。
「先生」
主殿の所作を思い出すだけでまだ気持ちが穏やかに、そして体の芯が疼くのじゃ。
「ヘラレント先生」
おっと、いかんいかん。
「すまんすまん、ニノン何事じゃ?」
「何か足りないお薬等はありませんか?」
「いや、今のところ大丈夫じゃ」
「わかりました。それにしてもヘラレント先生、何か良いことでもあったのですか?」
「わかるのか?」
「えーと、気が付いてらっしゃらないのですか?」
む?
何かあったかの?
「今日は朝からずーっと、嬉しそうにニコニコされていますよ。後はなんと言いますかお顔がツヤツヤとしています」
うむ?
そんなに嬉しそうにしていたかの?
「それで何があったのですか?」
「そ、それはの」
こ、これはなんと返せばいいのじゃ?
惚れた男と云々などと説明すればよいのかの?
だが、なぜかはわからんが、は、恥ずかしいのじゃ。
「あははは、私が理由をおしえてやろうニノン君」
「あ、ハカセ。おはようございます」
「うむ、おはようニノン君」
「ハカセはヘラレント先生の機嫌が良い理由がわかるのですか?」
「うむ、私くらいにもなると、そのようなこと造作もないのさ」
な、ハカセ。
「ハカセ、余計なことをいうでない!」
「おめでたいことなのだから、別に良いではないか」
「確かにそうなのじゃが……」
そうなのじゃ、嬉しいし、隠すようなことではないと思うのじゃが。
なんというか、こう、恥ずかしいというか。
これはなんなのじゃろうな?
「それで、ヘラレント先生のおめでたいことってなんなんですか?」
「それはだな、新しい治療魔法の開発に成功した! もうこれしかあるまい」
……。
まあ、ハカセじゃしな。
こんなもんじゃろ。
「というのは冗談だ。ヘラレント君は村長さんと結ばれたのさ」
なっ!?
「本当ですか!? ヘラレント先生」
「その、それは、その」
不意をつかれたせいなのか?
巧く言葉がでないのじゃ。
あと、顔が、顔が熱いのじゃ。
「ヘラレント先生、おめでとうございます! やっと先生の想いが通じたんですね!」
「う、うむ、ありがとうなのじゃ」
「幸せそうな顔で何よりじゃないか! 流石は村長さんだ!」
「そ、その」
「お、噂をすれば。おーい、村長さーん」
な、な、主殿!?
ど、どうすればいいのじゃ?
何がなんだがわからないのじゃ!
「ヘラレント先生、幸せなんですね」
「む?」
「お顔は真っ赤ですが、とっても嬉しそうなお顔をしていますよ」
!?
「ほら、ヘラレント君。村長さんのところに行っておいでよ」
「じゃが、しかし」
「先生。まだ、お仕事は始まりませんから大丈夫ですよ」
う、うむん。
「ほらほら。会える時間があるときに、しっかりと側にいないと何時、何が起こるかわからんのだからな」
「そうですよ先生。大切な人と一緒にいられる時間はとっても大切なんですよ」
なんじゃ?
急に言葉に重みと圧力が。
「わ、わかったのじゃ。ちょっと主殿のところに行ってくるのじゃ」
「うむ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
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