第191話

 エチゴラさん、考え込んでるみたいだね。

 設備を見てなにか思い付いたかな?


「エチゴラさん、まだまだご案内する場所があるのですが」


「……」


「エチゴラさん?」


「っと、申し訳ありません」


「まだ、ご案内できる場所があるのですが」


「申し訳ありません、ヒダリ様。しばらくここで考えたいことがあるので、後日でもよろしいでしょうか?」


 今日はもう無理そうだな。

 完全に露店関係のことで頭が一杯みたいだ。

 こういうところはナセルリナさんと似てるのかね?


「わかりました、ではまたの機会にということで。操作用の端末をお渡ししますので、ご自由にお使いください」


「ありがとうごさいます!」


 テンション高めのエチゴラさんか。

 なかなか珍しいものが見れたね。

 それはそうと、こっからどうしようか。


 ん?

 あれはナセルリナさん。

 何してるんだ?


「ナセルリナさん」


「ヒダリさま」


「何をされているんですか?」


 屋台エリアの一角で行ったり来たり。

 考え事かね?


「ええとですね、少し悩んでいまして。あの、ヒダリさま、もしよろしければ少し相談に乗っていただけませんか?」


「私でできることなら、喜んで」


「ありがとうごさいます。あの、相談したいことというのはですね、ここの屋台の種類についてなんです」


「屋台の種類ですか」


「はい、ここは十字の大通りを中心に、四つの区画に分けられていますよね?」


「そうですね」


「この構造だと、大勢の人か行き交っている場合に、他の区画への移動が難しいのではと思いまして」


 たしかに。

 しかも飲食物を持っての移動はもっと大変そうだ。


「それでですね、いくつか対策を考えついたのですが……」


「どの案が良いのか、悩んでいたと」


「はい」


「わかりました、参考になるようなお話ができるかはわかりませんが、是非とも協力させて下さい」


「ありがとうごさいます」


 はてさて、何か役に立てればいいんだが。


「案は二つ。一つ目が区画間の移動をしなくても良いようにお店を配置する案です」


「区画移動がいらない店の配置ですか。どのような配置でしょうか?」


「四つの区画全てに、全く同じお店をならべます」


 たしかに、それだと区画間を移動する必要性はかなり下がるな。

 しかも、同じ店が多いなら運営側の負担も減りそうだ。

 ただ同じ店舗ばかりだと、なんというか見た目的にあまり楽しく無さそうな気がするんだが。


「二つ目が区画間の移動に、この十字の大通りを使わない作りにすることです」


「この十字の大通りを使わない。それはどういった作りでしょうか?」


「それはですね、ここを二階建てにしてしまいます」


「二階建てですか」


「はい、移動に関しては二階を通って移動してもらいます。そして大通りに面している部分には、柵を配置して基本的には移動できないようにしてしまいます」


「なるほど」


「お店は二階の中央に□状に集め、周囲を歩いてお店を選べるようにします。そしてそれ以外の二階部分と一階を客席にします」


 一つ目の案より心なしか楽しそうだね。

 こっちの案の方がおすすめなのかな?


「二階部分は外壁を全てガラス張りにして、少し高いところから外を見ながら食事ができるようになると、さらにお客さんに喜んでもらえると思います」


 うん、こっちの案がやりたいんだろうね。

 本人の中でも答えは出てると思うんだが。

 多分、費用とか上下の上り降りとか、ネックになる部分が気になってるんだろうな。


「私としては、二つ目の案がとても素晴らしいと思うのですが」


 ネックになる部分なんざ、後からどうにでも対策すりゃいい。

 それよりも、やりたいことがあるんならやりたいようにやった方が楽しいからな。


「ヒダリさまもそう思いますか!」


 ナセルリナさんいい笑顔だ。

 どうやら正解だと思って良さそうだな。


「技術面や設備面で心配なところは、遠慮なく言って下さい。その代わり妥協は無しです。ナセルリナさんの作りたいもの、やりたいことを、余すところなく教えて下さい」


 ?

 どうかしたのか?

 心なしか顔が赤いような……?


「ナセルリナさん?」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 ネック何てもんは取っ払っちまえばいいんだよ。

 うちの村には、それができるたよれる連中が山ほどいるからな。


 まあ、たまに別方向に色々振り切れるのが玉に傷だけどな……。

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