第181話 とある将軍の誓い

 

 まさか砦が一撃で消滅とは。

 一日くらいは耐えられるかと思ったんだがな。

 まあそれでも全員撤退できる時間は稼げたんだ、良しとしとくか。


「報告、ご苦労さん。とりあえずゆっくり休んでくれ」


 補給線を確保してからの進軍だとしても、これではあまり時間は無さそうだな。

 こりゃ、俺たちが王都に戻った直後辺りに、あの大艦隊も王都に到着しそうだ。


「女王陛下にはこの件の報告はいっているんだよな?」


「は。既に伝達の者が早馬を出しております」


 はてさて、どうしたものか。

 女王陛下に報告がいったところでどうなるかね。

 大防壁の部隊を、全てこっちに戻すわけにもいかないしな。


 そしてなにより時間が足りない。

 それに、あのよくわからん兵器を防げるとも思えない。

 これは結構厳しいことになりそうだな。


「急いで王都に戻るぞ」




 早馬からの情報は届いているんだよな?

 それにしては城内が落ち着いている。

 まあ、兎に角女王陛下への報告か。


「申し訳ありません、女王陛下。砦を一つ失いました」


「いや、報告にあった兵器の威力を考えると抵抗したところで結果は変わらなかっただろう」


 女王陛下もあまり焦っていないか。

 あれだけの相手に対抗する手段があるのか?


「お前が事前に戦力差から判断して、撤退に全力を注いでくれたおかげで貴重な人材を失わずに済んだ。ローラン将軍よくやってくれた」


 砦を失った将に、よくやったか。

 相変わらず人を大切にされる方だ。

 甘過ぎると思わなくもないが。

 それが女王陛下のいいところでもあるんだが。


「ノーナ女王」


「どうした、ダラガナン将軍」


「ノーゼノン帝国からの使者が謁見を求めてきた」


 もう来たか。

 早いだろうとは思ったが、これは予想以上だな。


「わかった、通してくれ」


 使者だけ先行してきた可能性は高いが……。

 既にあの大部隊が近くまで来ていると思っておいた方が、間違いはなさそうだな。


 っと帝国の使者が来たようだ。


「初めまして、女王陛下。私はベルベーノラともうします、本日はノーゼノン帝国ダチキッシュ皇帝からの書状をお持ちいたしました」


「ご苦労。書状の方を預からせていただこう」


 あの使者、只者じゃあないな。

 放ってる殺気が尋常じゃない。


「それでは私は失礼いたします。良いお返事がいただけることを期待していますね」


 ……行ったか。

 書状を受けとるのを見ていただけなのに、えらい疲れた。


 女王陛下は?

 あの殺気もあまり気にならなかったようだな。

 どうやら書状に目を通しているようだが。


「ダラガナン将軍、私は一度陛下の元に行ってくる」


 陛下、か。

 個の力で神代竜を一撃で倒したと言う話だが。


「わかった。砦の件もある、あまり長引かせるのは得策とは思えん」


「なるべく早く朗報を持ち帰るようにする」


「頼んだ」


 この状況で女王達に焦りの色が全く見えない。

 ということは、噂の陛下に帝国の戦力に対抗しうるだけの力があると言うことか。


「さて、ローラン将軍。たのみがある」


「どうした」


「あまりないとは思うが。帝国へ無駄な挑発をする輩がでないよう、兵達の管理を頼む」


「わかった」




 既にこの国は包囲済みか。

 この状況で王都の住民達を逃がすとなると、なかなか苦しい状況だな。

 さて、どうするか。


「ローラン将軍、今のところ我が軍に余計なことをしそうな輩は見当たりません」


 まあ、これだけの大部隊が相手だ。

 戦力差を考えたら、下手な行動を起こす気持ちも失せるか。


 光!?


「将軍! あれは!?」


 なんだあの光の奔流のような塊は!?

 あれが砦を吹き飛ばした攻撃か!

 城を狙っていないところを見ると脅しの為の威嚇攻撃か?

 くそったれ、あそこにだって大量の住人が住んでるんたぞ。


 なんだ?

 人影?

 なっ、ば、は?

 光の奔流が消し飛んだ。


「しょ、将軍、今のは?」


 俺にだって意味がわからんよ。

 何が起こっている?

 さっきの人影が原因か?


 今度はなんだ?

 大部隊からの一斉攻撃全てが防がれてるいるだと!?


 ん?

 人影の回りに球体が現れて……弾けた!?

 なっ、はっ?

 大部隊が、消えた???


「どうやらノーナ女王は間に合ったようだな」


 ダラガナン将軍、いつの間に。


「ダラガナン将軍、あれはなんだ?」


「あれこそがノーナ女王が陛下と崇めるお方の実力だ」


 わはははははは。

 なんだあれは、あんな力、たしかに崇める以外どうしようもない。

 こんな力を目の当たりにしては、ノーナ女王達があの程度の部隊や兵器で動揺などするよしもないな。


「どうだローラン将軍」


「いや、ノーナ女王の判断の素晴らしさを実感したよ。あの方の元に降ったという選択、素晴らしい判断だ。教えくれ、ダラガナン将軍。あの方のお名前を」


「ガンドラル村の村長、サシチ・ヒダリ殿だ」


 サシチ・ヒダリ殿か。

 今この瞬間この国を守っていただいたそのお力、生涯忘れません。

 あなたが望むかはわかりませんがこの剣、あなたにも捧げましょう!

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