第182話 とある皇帝の皮算用

 

 雷号砲か。

 あの魔塔の最上階でベルベーノラ様から与えられた力の中でも群を抜く破壊力だったな。

 魔力の充填に丸一日かかる所は若干不便だが。

 あれならば、帰らずの森の奥にいるという狂竜アスクリスを恐れる必要もないだろう。


 ベルベーノラ様ご本人と頂いた力のおかげで皇帝の座を得ることもできた。

 帝国内の世論を反ガウンティへと煽ることにも成功した。

 国民からの信任も厚いし、兵士の士気も高い。

 あとはガウンティ王国を手にいれるのみ。


 そして帰らずの森を開発し、狂竜アスクリスを討伐すれば……。

 私は歴代の皇帝の中で最高の評価を得ることができる。

 雷の女神の眷属であるベルベーノラ様が私に手を貸す理由はわからんが、この好機を利用しない手はない。


「ダチキッシュ、今もどったわ」


「お帰りなさいませ、ベルベーノラ様」


「あなたの書状はしっかりと渡してきたわよ。それでこの後はどうするつもりなの?」


「まずは雷号砲で街の一部を破壊し牽制をかけます」


「あら? 一日の猶予を与えるつもりではなかったの?」


「猶予は与えますよ。こちらに降伏するという意思を固めるめの猶予ですが」


 奴等、こちらの再三の誘いに対して、ガンドラルなる村の配下に入ったなとどと訳のわからん返事を繰り返してきていたからな。

 こちらが本気だということを身を持ってわからせてやらねば。


「それだと武器を持たぬ人々を大量に殺すことになるのではなくて?」


「これも我が帝国の発展のため。この事に対する批難は甘んじて受けましょう」


「ふーん。まあ、あなたがやりたいようにやるといいわ」


 !?

 消えた?


「私はあなたの横でそれを見ているだけだから」


 やはり、何を考えているのかわからないお方ではあるな。

 それでも、全てを飲み込む度量を見せてやろうではないか。


「わかりました。どうぞ私の横でベルベーノラ様のお力添えをいただいた、帝国の勝利をご覧下さい」


「ふふふ、楽しみにしているわ」


 それでは私の栄光への一歩を踏み出すとしよう。


「雷号砲発射準備!」


 発射準備も整った。

 ガウンティ王国の国民には申し訳ないが、私の栄光の踏み台となってもらう。


「雷号砲撃てぇ!!」


 この一撃は帝国の歴史に私の名を残す偉大なる一撃だ!


 ……。

 !?


 雷号砲の一撃が消えた ???

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