第180話 ナセルリナの想い

 

 王都がノーゼノン帝国の軍隊に囲まれてしまった。

 街の人達がざわついてる。

 なのに叔父さんだけはあまり気にしていないみたい。


「叔父さん、なんでそんなに落ち着いてるの?」


 逃げようと思えば、直ぐにガンドラル村に逃げられるから?


「そうですね、ヒダリ様の力の片鱗を見ているからですかね」


 たしかにヒダリさまの強さは凄かった。

 10機近い魔動機兵を一瞬で壊滅させてしまった。

 でも、今回の相手はあのときよりももっと沢山いるよ。

 それにとても強力な武器を持っているって話も聞いたし。


「ナセルリナ、不安ですか?」


「はい」


 だってあんなにたくさんの戦艦や魔動機兵に囲まれてるんだよ。

 不安にならない方がおかしいよ。


「大丈夫ですよ。多分あの程度の戦力では、ヒダリ様の足元にもおよびません」


 叔父さんがここまで言うってことは、何か確信があるのかな。

 実はヒダリさまが何か凄い武器をもってるとか?


「そうですね、こう言えば安心しますかね? ナセルリナ、貴女が見たヒダリ様の力はほんの極一部でしかありません」


 え?

 どう言うこと?

 それってまだまだヒダリさまが本気を出していないってこと?


「あの方の力は底知れません。なんせ、神すら退けるお方ですからね」


「神!?」


「ええ、夜の巫女様を拳一つで退けてしまいましたよ」


「それって………!?」


 何か光った?

 軍隊がいる方!


「これはまた。ノーゼノン帝国もとんでもない兵器を持ち出しましたね」


 あれはなに?

 光の奔流が地面をえぐりながらこっちに迫ってくる。

 これが、帝国の兵器。

 ……こんなものどうしようもないよ。


「まあ、あの方にはあまり意味が無さそうですが」


 光の奔流の前に人?

 え?

 光が止まって……霧散した!?


 あれって噂になってた帝国の凄い武器だよね?

 砦一つを一瞬で消滅させたとかっていう。

 それをあっさり止めちゃうの?


「やはり、この程度ではびくともしませんか」


 今度はいろんなところから!?

 戦艦や魔動機兵からの一斉攻撃!

 って、あれ?

 攻撃が……全て防がれてる。


「さあヒダリ様が動きますよ。ナセルリナよく見ておきなさい、ヒダリ様の強さと恐ろしさを」


 恐ろしさ?

 なんのこと?


 ヒダリさまの回りに球体が。

 あれってお屋敷襲撃の時にも出てた球体?

 でも大きさが前に見たやつより大きい。


 球体が弾けて……

 え???

 戦艦や魔動機兵が消えた!?


「終わりましたか」


 え?

 え?


「まさか、あれだけの数を一瞬ですか。協会や私の屋敷で見せた力すら本当の極一部とは」


 今の一瞬で終わり?

 仮にも相手は一国の軍隊。

 それがホントのホントに一瞬で跡形もなくなるなんて。


 これが……ヒダリさまの力。


 あれ?

 よく見たら一隻戦艦が残ってる。

 なんで?


「あはははは、流石ヒダリ様。相手を完膚なきまでに叩きのめしながら、責任者にはきっちりと責任を取らせるおつもりですか」


 えっと、どういうこと?


「これでまたガンドラル村の資産が大きく増えそうですね」


「叔父さん、それって」


「ええ、賠償でしょうね。億単位のお金もそうですし、ノーゼノン帝国ならば魔塔や魔窟の利権なんかもいいかもしれませんね」


 魔窟や魔塔の利権にお金。

 この一瞬でそんなに稼いじゃうのかぁ。


 武力で脅されても跳ね返して自分達の利益にしちゃうし。

 村づくりでも色々と面白い事を提案してくれるし。

 やろうとする事業も変わったことやりだすし。


 本当にヒダリさまは面白いよね。

 側にいると全然飽きない。

 あの人の側は多分ずっとこんな感じなんだろうな。


 楽しくて、楽しくて、ずーっと側にいたくなっちゃうよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る