第178話
孤児院の子ども達は新しい生活を楽しんでくれているらしい。
治療院と保育園も今のところ好評だそうだ。
「とりあえずは成功かな?」
まだ一ヶ所目だからな。
人材もお金もかけられる。
これが複数になったと時にどうなるかだな。
「とりあえずなんてものじゃない。大成功だ!」
おおう。
ザーバレナさん、テンション高いな。
「私からもお礼申し上げます」
ゼラマセンさんまで。
孤児院に関して思うところがあるのかね?
「しかし村長殿、なぜ子ども達にあそこまでするのだ?」
「?」
「いや、別に文句があるわけではない。だが孤児院にしても治療院にしても保育園といったか? あの施設にしても、他の場所では考えられないほど、子ども達を手厚く保護しているように見えるのだが」
うーん、あれが手厚いのか。
子どもに投資するってことがあまり大切に思われてないのかね?
「ザーバレナさん、簡単なことですよ」
「どういうことだ?」
「子どもが沢山育てば、その子達はいずれ国に労働力を提供してくれて、さらには税まで納めてくれます。もしかしたら今までにない産業や技術を生み出す可能性だってあります」
子どもたちをしっかりと育てるってのが一番簡単な国力強化だと思うんだが。
「そんなもの、大きくなってみないとわからんではないか」
「それはそうですよ。ですが一人より二人、十人より百人、百人より千人。可能性が多いに越したことはないでしょう?」
「だが」
「それに一人が普通に大きくなってくれれば普通に働いてくれる人が一人増えます。最初にも言いましたが、それだけでも十分国の利益にはなりますから」
えらい長寿の種族とかも多いしな。
こういう考え方は馴染まないのかね?
「なるほど。一理ある、のか?」
「それも含めて今後の継続課題だと思いますよ」
育成事業なんざ、長い目で見ていくしかないでしょ。
「たしかに。あせる必要はないということか」
「そうですね。焦らなくてはならない状況ではないですね」
幸いなことにな。
「金と人材と機材があるこの村だからこそ言える言葉だな」
「という事で、引き続きよろしくおねがいいたします。ザーバレナさん」
「わかった。だがな村長殿、風呂にあそこまで力を注ぐ意味があるのか?」
あー、それはなぁ。
「ナニを言ってるんデスカ!」
うん、まあ俺が原因じゃないんだよな。
というかルル、どっから涌いてきんだ?
「一日のハジマリ、一日のオワリのお風呂を大切にしなくてドースルンデスカ!」
「あの、村長殿、これは?」
「あー、大丈夫ですよ。言いたいことが終われば落ち着きますから」
軽く半日コースとかあるけどな。
まあ、頑張ってくれ、ザーバレナさん!
「ちょ、ちょっと待ってくれ村長殿」
な、ちょっ、こっちを巻き込むんじゃない!
直ぐに飛び火してくるから。
「丁度イイデス。セブンにもお風呂の素晴らしさを再認識して貰いマショウ!」
全然丁度良くないよ。
くそ、だ、誰か助けは?
ゼラマセンさん……はいねえ!?
危険を察知して逃げやがった、流石一流執事。
「そ、村長殿?」
「ザーバレナさん。時には諦めも肝心です」
うん、無理だね。
これはね、逃げられない。
日々の学習で俺は学んでるからね。
「いや、そんな死んだ魚のような目で諭されても」
うるさいな、人間諦めも肝心なんだよ。
「サア、ミナサン行きまショウカ!」
もう祈るしかないな。
せめて半日コースで終わりますように!
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