第163話 とある男の悪巧み

 

「ザーバレナ、本当にそれでいいの?」


 折角ゼラマセン達が頑張ってくれたんだ。

 これに乗らない手はないよね。


「む」


「解任された時はあんなに悔しがっていたじゃないか。まだまだやりたいことがあるって」


 少なくとも10億のお金があって、ゼラマセン達に年20万まで払う何て言う人だよ。

 うまくやればザーバレナのやりたかったことができるんじゃないかな?


「だがしかし、こんなやつの世話になるなど」


 こういうところがまだまだなんだよね。

 まあ、こういう熱くなっちゃう所が可愛いんだけどね。

 説得の切り口は、うん、ゼラマセン達かな?


「ザーバレナはゼラマセン達をそんな人のところに行かせたの?」


「そ、それは……」


 効果ありかな?

 さらに追い込んでいこうか。


「それともこの街でザーバレナのやりたいことが出来るの?」


「できないことは」


 もう一押しかな。

 後はもう少し熱くなってもらうかな?

 ゼラマセン達の印象もよくしておきたいしね。


「出来ないでしょ? 権力も仕事も取り上げられて、協会の見張りがそこらじゅうにいて自由に何かをすることなんてできやしない」


「だからといって」


 珍しく頑張るね。


「はあ、ザーバレナだってわかってるんでしょ? 今のままじゃ良くないって。大局の前にどうでもいい意地を持ち込んでどうするの?」


「ね、ザーバレナ」


「パンナートは一緒に来てくれるのか?」


 えっと、そこ?


「いや、僕は難しいんじゃないのかな? それこそ実績もなにもないし」


「パンナートが来ないなら私は行かない」


「そんな子どもみたいなこと言わないで、ザーバレナ」


 うん、個人的には凄く嬉しいんだけどね。


「嫌だ! パンナートと一緒じゃなきゃ」


 さて困ったな……。

 熱くはなってくれたんだけど。

 方向が……どうやって打開しようかね。


「あの、お二人ご一緒で構いませんよ」


 あれ?

 いいの?


「なに! 本当か!?」


 想定外の申し出だけど。

 ザーバレナの声も大きくなってきたし。

 いい感じだね。


「ええ、もちんです。ただゼラマセンさん達同様に面接担当の者達から審査はされると思いますが」


 へー、ゼラマセン達も採用確定ではないんだ。

 というか自分の所で働く人の決定を他に丸投げかあ。

 判断の難しいところだよね。


「パンナートと一緒に行けるならなんだっていいさ。さあ何処へなりとも連れていってくれ。こんな辛気臭い所とはおさらばだ!」


 いいね、ザーバレナ。

 大きな声で最高の発言だ。


「ヒダリ様、ご迷惑をおかけします」


 外の連中も動いてくれたし、僕も売り込みをかけうよか。


「ゼラマセン、レザラオル、ウロフロス、アシアウェス、片付ける!」


「は!」


 見張りの気配が消えた?

 外の気色も変わった?

 一体なにごと?

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