第155話

 さてどうするか。

 話を聞いた方が良さげな二人が気絶しちまったからな。


「ナセルリナさん、今日はどうしたの?」


「ヒダリさまにこの村の案内をしてもらっていたところです」


「そうかー、じゃあ農場の見学に来たってことだね」


「そうですね」


 メインで関わってる二人が目の前で伸びちまったけどな。

 このままだと、見学内容が耕された土と担当者の喧嘩で終わるな。


「ならボク達でもある程度わかることもあるし、案内してあげるよ」


「ありがとうございます」


 巴には申し訳ないが意外だな。

 こういうのはあまり得意じゃないかと思っていたんだが。

 パポール達の喧嘩といい、皆についてまだまだ知らんことだらけだな。


「それで喧嘩の原因はなんだったんだ?」


「えーと、植える物のことでもめてたみたい」


「土地はそれなりの規模があるように見えるんだが、それでも揉めるのか?」


「えーとなんでだったかな?」


 ポヨスケ?

 巴に何か言ってるのか?


「うんうん、そうだったね。ありがとうポヨスケ」


 ポヨスケから教えてもらってるのか……。


「二人が植えたいものが、水辺でしか育たない上に相性が悪くて一緒に植えられないんだって」


「それなら距離を離して植えればいいだろ」


「えーと……ポヨスケ。うんうん、なるほど」


 これ、説明してるの巴じゃなくてポヨスケだよな?

 ポヨスケがこっち見てるしな。

 細かいことは気にするなってことか。

 ポヨスケ、なんか巴の保護者みたいだな。


「えーとね、どっちも地下で根を広げて広がっていくタイプで、離していても直ぐに喧嘩になっちゃうから、どちらかしか植えられないんだってさ」


 竹とかミントみたいな感じの植物なのかね?


「喧嘩と言ってもそんな激しいものでもないだろ? 仕切りでも入れればいいんじゃないのか?」


「んっと、ふむふむ。地面が変形するほど殴り合うんだって。仕切りごと相手を殴るから意味がないってさ」


 えらくアグレッシブな植物だな。


「外敵なんかも、地面の下から突き上げて撃退するんだって」


「パポールもケイトもなにするつもりなんだ?」


「嗜好品? 葉っぱを噛むんだって」


 そんな物理的に危ねえ嗜好品なんていらねーよ。

 ガムでも噛んで我慢しろよ。

 そういやガムなんてあるのかね?


「そんな危ねえもん、どうやって収穫するんだ? その前にどうやって育てるんだよ」


「なんかコツがあるらしいよ」


 なんにしても地中から殴られる水辺なんか嫌すぎるわ。


「それは植えないといけないものなのか?」


「嗜好品だからね。なくても構わないかもしれないけど、パポール達ポタ族のみんなもケイトとかニノン達精霊種のみんなも、期待はしてるみたいだよ」


 んー、そう言われるとな。

 そういう楽しみも重要だからなぁ。

 どうしたもんかね?


「あの、ヒダリさま。今話題になっているのはバンリーブカの木とミガレンヌ草のことでしょうか?」


「ポヨスケ、じゃなくて巴。そうなのか?」


「えっとね、そうだって」


「それなら、最近出回り始めてる新種がありますよ」


 新種?


「最近なのですが、バンリーブカとミガレンヌの狂暴な特性と相性の悪さを取り除いた新種が出回るようになったんですよ」


「ならそいつを仕入れればいいんじゃないのか?」


「ただですね。提案しておきながら申し訳ないのですが、育成の条件が普通のものよりは厳しいらしく……」


「そこは私達が何とかします!」


任せてください!ぴゅいぴゅいぴゅ!


 二人とも起きてたのか。


「先生」


村長ぴゅい


「まあ、いいんじゃないのか? そもそもその辺は皆にまかせてるんだし」


「ありがとうございます!」


ありがとうぴゅいぴゅいございます!ぴゅいぴゅい!


 これにて一件落着かな?

 そういや嗜好品の類いってあまり見てないな。

 酒も作れたりするのかね?

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