第146話 とある竜双師と竜の関係

 

『おい、ゾブラルシ』


『どうした、サトル』


『そのアスクリスとかいう竜は、そんなにいい女なのか?』


『まあな、次期神代竜たる俺に相応しい女だな』


 いい女じゃなくて相応しいね。

 まあ、俺から見たら全部デカいトカゲだけどな。


『そいつはお前より強いんだろ?』


『ふん、今の俺ならば遅れはとらん』


 か。

 まあ、持ちつ持たれつだから構わないがな。


『やっとだ。あの小生意気な娘をこの手で叩き潰して、俺の前に跪づかせてやる』


『お前らの話だと、その竜は神代竜の娘なんだろ? 襲ったりして問題にならないのか?』


『問題になどなるものか。それよりも神代竜の娘が、ただの人間にうつつを抜かしているほうがよほど大きな問題だ』


『だが、神代竜はそのことを問題視してないんじゃないのか?』


『ふん、そもそもアスクリスを娶る条件は、あの女よりも強いという一点だ。ただの人間が竜より強いなどあるわけがないだろう』


『何らかの不正行為を働いてるってか?』


『そうだ、ならばそれよりも強いものが力を見せつけ強奪するまでだ』


 いつもの力付くか。

 まあ、分かりやすくていいんじゃねーの。


『それにその男はほかにも竜をつれていてな』


『へえ、そいつも女なのか?』


『ああ、ジスジャージルという』


『そいつも手にいれるつもりか?』


『もちろんだ、強い竜には複数のいい女が必要だろ?』


 はあ、こいつの自意識過剰も相変わらずだな。

 まあいいけどさ。


『サトル。話によると、アスクリスの男の所には他の女も複数いるらしいぞ』


『へえ』


 ちょっと、やる気が出てきたぜ。

 なかなか楽しめそうだ。


『どうやらやる気になったようだな。貴様の下衆な趣味は理解できん』


『ゾブラルシ、お前だってやってることは変わらんだろ』


『俺は貴様のように絶望に染まる女の顔を見て、興奮したりはしない』


 人の趣味にケチつけるなよ。


『まあ、いい。お前が俺に力を貸している限りは、お前の趣味の邪魔はしない』


 そうだな、お互い様だな。


『なら、これだけの竜を連れていく必要はないんじゃないか?』


『俺達たけでアスクリスを跪かせることはできるが、逃げられても困るからな』


 ふーん。

 まあ、そういうことにしておくか。


『なあ、回りにいるのは全部竜なのか? なんというか雰囲気の違うやつが結構いるんだが』


『お前の力はある程度の知能がある竜にしか反応しないからな。その辺にいる飛竜はただのトカゲだし、下位の竜なんかも知能はそこまで高くない』


 あの大量にいる意志疎通ができなさそうな奴等は雑魚ってことか。

 まあ、それにしたって一頭いれば小さな街程度なら、簡単に蹂躙できそうだけどな。


『サトル、気をつけろよ。俺と共にいる間はあいつらも手出しはしてこないが、俺から離れればなにをするかわからん』


 竜とはいっても所詮はただの獣か。


『わかった、気を付ける。というかお前がしっかり俺を守ってくれよ』


『わかっているさ。俺をここまで強化できるお前を、俺が守らないわけがないだろう』


 世界がよくわからんことになったときは流石に焦ったがな。

 この竜双師りゅうそうし? とかいうジョブ? のお陰で、前の世界よりもはるかに楽しく過ごせるようになったからな、人生なんてのはわからんもんだ。


『お互い持ちつ持たれつなんだ。よろしく頼むよ』


『ああ、わかっている。さて無駄口はここまでだ、目的地が見えてきた』


 さてはて、今度はどんな女がまっているのかねぇ。

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