第139話

「それでレイラさん、ナディアいつから仕込んでた?」


 ガウンティ夫妻以外にも、結構な連中がリストに載ってるんだよ。

 今日一日でってのは流石にありえねぇからな。


「なんの事でしょう?」


「なんの事だ?」


「別に怒ってるわけじゃないさ。単純にこの話に至った経緯を教えてほしいだけだよ」


 まあ、この二人が絡んでるんだ。

 きちんとした背景はあるんだろ。


「陛下、私の方から説明させていただいても?」


「よろしくたのむよノーナさん」


「ガウンティ王国はここ数年、ノーゼノン帝国という国から従属をせまられていまして」


 帝国ねぇ。

 名前が違うから前のとは別の帝国かね。


「いつものらりくらりとかわしてはいるのですが」


「それでな、たまに我らがノーナの相談にのっていたのだ」


 ルルとは気が会うとは思っていたが。

 レイラさんやナディに相談を持ちかけたのか。

 まあ、二人とも元領地経営者だしな、こういった話ならうってつけか。


「それであんまりにもしつこいみたいでしたから、それならばガンドラルの属国となったことにして、相手を煙に巻いてはと思いまして」


 まあ、どこにあるかわからん村相手となると相手も面倒くさくなるだろうしな。


「だが、それでもここに来る奴は来るだろ? 武力に訴えて来たらどうするんだ?」


「それも見据えてですよ、あなた」


 ?


「いざとなれば、ガウンティの皆様にガンドラルまで逃げて来てもらえは良いかと」


 まあ、レイラさんの言うとおりだな。

 浮遊島の下の土地も入れれば、まだまだ土地は余ってるからな。

 受け入れ場所にはこまらんな。


「ただ、その時に他国の者か、自国の者かで受け入れ側の抵抗も少ないかと」


 レイラさん、言わんとしてることはわかるが、うちの村の連中がそんな細かいことを気にするとは思えんぞ。


「まあ、後は折角できた友人を助けたいという気持ちがな」


「わかった」


「いいのか?」


「いいのですか?」


「かまわないよ、レイラさんとナディがなんの考えもなく提案なんかしないだろうしな。なによりも二人のことは信頼してるしな」


 それにまあ卑怯っちゃ卑怯だが、ノーナさんをはじめとしたこの国の人々の忠誠度が目視できてるしな。


「先生」


「どうしたケイト?」


「私は?」


「もちろん信頼してるぞ。ケイトのおかけで農園も順調だしな」


「オレはオレは?」


「まだ一緒にいるようになって日は浅いけどな。それでも頼りにはさせてもらってるさ」


「左の字……」


「巴も信頼してるぞ。ゲームの世界だったとはいえ、何度も背中を預けてたんだぞ、信頼してなきゃやってられんだろ。もちろん今もな」


「へへへ」


 ん?

 腕にナディ?

 どうした?


「ノーナ、申し訳ないが我が夫を少し借りていくぞ」


 あれ?


「クリオネ様、一度ヒダリ様と私達をみんなのところに運んでください」


「な、なんじゃ」


「お・ね・が・い・し・ま・す!」


「お、おう。任せておけ」


「トモエ、ケイト、ジジいくぞ」


「わかったよナディさん」


「はい」


「おう!」


 え?

 ちょっ。

 あれ、パポールさん、こいつないわーみたいな視線が痛いんだけど。


「それでは皆様続きは明日という事で、ヒダリ様をお借りしますね」


「私はいつまでこのままなのでしょうか?」


 申し訳ないエチゴラさん、本気で忘れてた。

 そして、拐われる俺にはなにもできない。

 という事で。


「明日までまっていてください」


「はあ……今日は本当に最後まで衝撃的な一日ですよ、全く」

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