第138話

 終わった、終わった。

 家のことを任せられる人材のめどもたったし。

 資金も増えたし。

 さっさと帰りますか。



「おかえりなさいませ陛下」


 なんでノーナさんとダラガナンさんがいるんだ?

 しかも、なんで片膝ついてるのかな?

 しかも陛下ってなにかな?


「我らガウンティ王国は本日を持ちましてガンドラル村の傘下に入ることを決めました」


 は?

 ノーナさん、なにをおっしゃっているんですか?


「つきましては今後は我らは陛下の家臣となることになります」


 え???

 いや、レイラさんにナディ。

 ウンウン頷いてる場合じゃないだろ。


「ああ、ご心配には及びません。ガウンティの運営につきましては、私たちが引き続き行って参りますので」


 まあ、そうだよな。

 わかっている人がやるのが一番いいよな。

 ってそうじゃねえよ。


「あのノーナ女王、話が見えないのですが」


 本当に話が見えないよ。


「陛下、私の事はノーナとお呼びください」


 いや、呼ばないよ。

 公の場で他国の女王様を呼び捨てとかありえないでしょ。

 それに何より、その呼び方をしたら、なにか色々終わっちゃう気がするんだよ。


「陛下?」


 陛下じゃねーよ。

 なんでこんなことになってるんだよ。


「レイラさん、ナディ。どういうことなんだ?」


「どうもこうもありませんよ、あなた」


 どうもこうもあるよ。


「うむ。ガウンティ王国が我らの属国になったということだ、我が夫よ」


 うむ、じゃねーよ。

 なんだよ領地って。

 なんでそんな話になってるんだよ。


「あなたから事後処理を任されましたので」


 確かにまかせたよ。

 でもさ。


「きっちりと取り立てただけだ、我が夫よ」


 なんで取り立てで国一個貰ってくるんだよ。

 金だせやって言ったら、国が一個でてきましたってか。

 ありえねーだろ。


「というかノーナ女王」


「ノーナです、陛下」


 くそ、その本気の顔は卑怯なんだよ。

 訳がわからん。


「誰か事の経緯を教えてくれ」


「先生」


「ケイト、お願いできるか?」


「わかりました。レイラさん達は、先生の残した文書の複製を持って王城に向かいました」


 そうだな、あの文書では王国も爺さんの討伐許可を出していたからな。

 取り立てに王城に向かうのは間違ってないな。


「そこで城の門番の方にお話をしたところ、直ぐに謁見の間に案内されました」


 門番て門の番をするのが仕事だよな?

 なんで声かけただけで謁見場所に連れてくんだよ。

 なんかこう色々早すぎねえか?


「謁見の間に行くと、ノーナ女王がお待ちでした」


 いやいや。

 女王がお待ちとか可笑しいだろが。


「謁見の間でレイラさんとナディさんが先生の残した文書を、ノーナ女王につきつけました」


 ふむ。


「そして蛮行を認めた国の行動を非難しました」


 証拠を突きつけての非難はなかなか、効果がありそうだよな。


「非を求めたノーナ女王は直ぐにこちらに謝罪」


 女王折れるの早すぎじゃね?


「ナディさんが謝罪の言葉だけでは足りないと伝えました」


 そうだな、色々むしらないとな。


「そしてレイラさんが国を要求しました」


 ここだな。

 ここが大きく間違ってるな。


「その要求を聞いたノーナ女王が要求を承諾」


 要求したレイラさんもあれだが……。

 だが応えるノーナ女王は流石におかしいだろ。


「そして現在に至ります」


 ……経緯はわかった。

 経緯はわかったが、意味がわかんねぇままだよ。


「我が夫よ、既に文書は交わされた。正式にガウンティ王国はガンドラルの属国となった」


「大丈夫ですよ、あなた。私達がいます、それにノーナ様達も協力してくれますし」


「陛下、私達も微力ながら協力させていただきます」


 ……どうにもならねえなこれ。

 なにせ家政夫のリストにガウンティ王国のタブが増えてやがるからな。


「わかったよ、これからもよろしくたのむよノーナさん」


「は! よろしくお願いいたします」


 さて、本当のことを話してもらいますかね。


「それでレイラさん、ナディアいつから仕込んでた?」

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