第123話

 ほんとガウンティは趣味全開だよな。

 街中に胡散臭いガラクタが溢れてやがる。


「左の字、ルルに声かけなくてよかったの?」


「ルルがいたらケイト達の買い物にならんだろ」


「レーブさんについててもらえば大丈夫じゃないの?」


 全く大丈夫じゃないからな、レーブとルルの組み合わせは。

 最近はそこに博士と教授、この国の女王様も混ざって危険極まりないないからな。


「事件になったばかりだからな。別件があるときはルル達は駄目だ」


「ああ、お店一つを壊しちゃったんだっけ?」


 主犯はこの国の女王だけどな。


「特にお咎めはなかったが、それでも一々騒ぎわ起こされたら買い物もできんだろ」


「まあ、確かにそうだね」


「儂はなんで呼ばれたんじゃ?」


「爺さんは一応警備だよ。あとはまあ108号の為かな」


「なるほどの、確かに面白そうなものがたくさんある」


「取り込むのはなるべく見えない所でやってくれよ。見つかったら研究させろって奴等に囲まれるぞ」


「クリオネを見て驚かないのか?」


「ああ。いいか、ジジ。この街の人達はみんなルル達だと思っとけ」


「どういうことだ?」


「驚く理由が恐怖とかじゃないんだよ。新しいものや面白いものを発見した時に驚くんだよ」


「竜が出てきてもか?」


「ああ、滅多に見られないものが出たって騒ぎになるぞ」


「自分達が死にそうな目にあってもか」


「下手すると死んだことに気付かない」


「恐ろしいな、この街は」


「だろ? そしてその先頭を行くのが、この国の女王とルル達だ」


「すごい国だな」


 ルルやレーブ、博士、教授がたくさんいる街とか。

 ダラガナン将軍は苦労してそうだな。

 まあ、自分の奥さんもそうだから平気なのかね?


「お主の村もおんなじようなもんじゃろ」


 うるせーよ。

 言われなくても身に染みてわかってるよ。


「ケイト、苗やら種やら言っていたが何を買うんだ?」


「パンの苗木と、あればですが植え替え可能なパンの成木ですね。あとは……」


「ちょっと待ってくれ。パンの木のパンって、あのパンか?」


「そうです、毎日食事で出ているあのパンですよ」


 ???


「あれって小麦粉から作ってる訳じゃないのか?」


「小麦粉? つくる? なんのことですか?」


「いや、小麦粉を練って酵母で膨らませてとかやるんだろ?」


「小麦粉がなんなのかわかりませんが、パンの木からとれるパンの身を焼いた物がパンですよ」


 パンが直接木になるのかよ。

 流石異世界。


「巴、知ってたか?」


「ボクも初めて聞いた時はビックリしたよ」


「だよな」


「先生、パン焼き職人の工房も覗いてみますか?」


「見せてもらえるものなのか?」


「そんなに珍しいものでもないですし。お仕事の邪魔をしないのであれば、見せてくれる所はあると思いますよ」


「是非、見てみたいな」


「わかりました。まずはパン焼き工房を訪ねてみましょう」

 

 街中で見かけてたのは、パン職人のパン屋ではなく、パン焼き職人の工房だったのか。

 まさかパンで異世界を感じることになるとはなぁ。

 なんにしてもパン焼き工房か、楽しみだ!

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