第119話 とある焔竜の決意

 

 クリ姉がつがいを見つけたって!?

 そんなの信じられない!

 強くて、カッコよくて、美人で、強いクリ姉だぜ?


 あまりにも信じられなくて、失礼を承知でダルダロシュ様の所まで確認に来ちまった。


「ダルダロシュ様、アスクリス様がつがいを見つけたというのは本当なのですか?」


「耳が早いねぇ。そうなんだよ、とても素晴らしい男性を見つけてきたんだよ」


 ダルダロシュ様がここまでお褒めになるなんて、一体何処の竜なんだ?

 あのお見合いに参加しないで無事だった竜の中で、クリ姉に勝てそうなのと言ったら……いないな。

 ということはオレの知らない竜か?


「アスクリス様のつがいというのは何処の竜なのですか?」


「ん? 竜ではないよ」


 竜ではない?

 竜以外がクリ姉のあの条件を達成したってのか?


「彼は多分、普人族?」


「ありえない! クリ姉が普人族を選ぶなんて」


「こらこら、公の場でその呼び方は不味いよ」


「おっちゃんはそれを認めたの!?」


「だからここは公の場だよ」


「それ所じゃないだろ?普人族がつがいの相手なんてありえないだろ」


「いい加減になさい、ジスジャージル」


「おばちゃ、ひっ!」


 まずい!

 禁句だった。


「ですがディラグラシア様」


「何かしら? それと次はありませんよ」


 危ねぇ、危ねぇ。

 どう考えてもおばちゃ、ひっ!

 ディラグラシア様の方が神代竜だと思うんだけどな。

 でも今はそんなことよりも。


「只の普人族がアスクリス様のつがいになるなど」


「あの方はクリスの望むものを持っていたのですよ」


 ありえない!

 クリ姉の望むものって、クリ姉より強いことだろ!?

 世間で狂竜呼ばわりされている、あのクリ姉だぞ。

 お見合いと称する暴力で、竜族の男達のほとんどをボコボコにした。


「ありえません! きっとアスクリス様は騙されているのです」


「そうは言ってもなあ、私達も彼には会ってきたしな。彼の実力は本物だぞ」


「ダルダロシュ様まで!?」


 なんてやつだ。

 クリ姉だけじゃなくおっちゃんまで騙してるのか?

 だが、ディラグラシア様までは騙せないはずだ。


 神代竜を尻に敷き、その怒りは一つの大陸全てを凍てつかせる女傑神竜妃ディラグラシア。

 実質竜族最強は伊達じゃないはずだ!


「失礼なことを考えているようですねジスジャージル」


 ひ!


「まあいいでしょう。私もあの方とお会いしましたがあの強さは本物ですよ。私達夫婦でも足元にも及ばないほどの強さでした」


 そんな事ありえない!

 神代竜と神竜妃よりも強いだって?


「嘘だ、皆そいつに騙されているんだ」


「ジスジャージル、君がクリスの強さに憧れていたのは知っている」


「ですがクリスの強さを盲目にしんこしすぎるのは問題よ。第一私達より弱いものが私達全員を騙すなんてことができると思う?」


 駄目だ。

 おっちゃんもディラグラシア様も完全に騙されてる。

 くそ、こうなったらオレが皆の目を覚ましてやる!


「もういい、オレがそいつをブッ飛ばしてやる!」


「ま、待てジスジャージル!」


「待ちなさい、ジスジャージル!」


「うるさい! 騙されてるおっちゃん達の話なんか聞けるか!」


 待ってろよ、普人族の男。

 この焔竜ジスジャージルがお前をブッ飛ばしてやるからな!

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