第120話 ジスジャージルの願い

 

 くそ、飛び出してきたはいいがクリ姉は何処にいるんだ?



 ……。

 駄目だ全然わかんねぇ。

 うーん、どうしようか……。


 あっ!

 おっちゃんとディラグラシア様。

 もしかしてクリ姉の所に向かうつもりか?


 どうせ何処に行っていいかわかねぇんだ。

 おっちゃん達の後をつけてやれ。

 待ってろよインチキ野郎。


 結構飛ぶんだな。

 っと距離に気をつけないと。

 ディラグラシア様の勘は鋭いからな。




 む、あの浮遊島に降りるみたいだな。

 ここがインチキ野郎のいるところか?

 まあ違ったところでまた探すだけだからな。


 島の上に屋敷やら民家やらが見える。

 こんな辺境の浮遊島にあんな豪勢な屋敷があるなんて。

 もしやクリ姉やおっちゃん達を利用して、あの屋敷を作らせたのか?


 くそ、インチキ野郎め。

 絶対に許さねぇ!


『出てきやがれインチキ野郎!』


 全部まとめてブッ飛ばしてやる。


 ……あれ?

 オレの焔が防がれた。

 どういうことだ?


「おい」


 な、なんだ?

 誰だこいつ。

 どこから来た?


『誰だ、おま』


 拳!?

 な、が……。


 こ、この一撃は確か、に本、物……。




 は!?

 ここは?


「ジジ大丈夫ですか?」


『クリ姉!』


「向こう見ずなのは相変わらずですね」


『そうだ、あいつは!?おぶっ』


「ジジ少し落ち着きなさい」


『く、苦しいよクリ姉』


「落ち着きなさい」


『わ、わかった。落ち着く』


 人化したままで、この力。

 クリ姉、また強くなってねぇか?


「そのままでは話もしづらいでしょうから、あなたもこちらの姿でお話してください」


『わかった』


「旦那さま、ご紹介が遅れました。こちらが私のいとこにあたるジスジャージルです」


「はじめまして、ジスジャージルさん。私はサシチ・ヒダリ、この村の村長をしております」


 こいつがさっきの拳の。


「ジジ、ご挨拶」


「あの、オレあなたの拳に惚れました! 一生ついていきます! 兄貴って呼んでもいいですか!」


「ジジ?」


「あらあら、熱烈な告白ね」


 ん?

 オレなにか変なこと言ったか?


「ジジ。一生ということはあなたもクリスと同じように、サシチさんとつがいになるということでいいの?」


 は?


「そんなつもりは」


 でもまてよ。

 兄貴はクリ姉よりもおっちゃんやディラグラシア様よりも強いんだよな。

 そしてあの拳、あの一撃。

 なら!


「アスクリス様、ダルダロシュ様、ディラグラシア様、お願いがあります」


「あらあら何かしら?」


「オレ、兄貴じゃなかった、ヒダリ様についていきたいです。あの拳にあの一撃に惚れました!」


「ということなのだけれどサシチ様? ちなみに竜族の女は諦めが悪いですよ」


「はあ、わかりました。つがい云々は置いて、とりあえずはこの村で暮らすという事でどうでしょうか?」


「兄貴のそばにいられるってことか?」


「そのようですよ。ここからはあなたの努力次第よ、頑張りなさいジスジャージル」


「わかった、オレ頑張るよ。ディラグラシア様」


「その意気よ。まずはあなたの後ろにいる従姉妹が最初の難関よ、頑張ってね」


 最初の難関?


「ジジ、ちょっとお話をしましょうか」


「クリ姉、頭がっ、頭が割れるよ!」


「大丈夫、そんな簡単に割れないから」


「でもミシミシって聞いたことない音が頭から」


「私も経験してるから大丈夫。旦那さま少々席を外しますね」


 兄貴助けてくれ!

 って目を逸らされた……。

 ダルダロシュ様も!


「ディラグラシア様!」


「頑張って、ジスジャージル。それが最初の試練よ!」


「それじゃあ、いきましょうねジジ」


 クリ姉の目がヤバい!

 兄貴、助けて!


「頑張れよ、ジスジャージル。手足がとれるくらいなら治せるから大丈夫だぞ」


「兄貴、なんの助けにもなってねぇよ! いやだあああ、誰か助けてえええ」

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