第110話 ケイトの想い その5
「これが先生の村。話で聞いてはいましたが凄いですね」
本当に空に浮かぶ島の上にお屋敷がある。
そして大きな湖と広大な平地。
水も土地も十分にありそうだ。
「一部施設はなんとかなったんだが、農業分野は本当に手探りなんだ。だからケイトいつかの依頼うけてもらえないか?」
先生はなんというか落差が大きい。
一国の王や権力者相手には横柄とも言えるくらい問答無用で物事を進めていくくせに、私達には慎重過ぎるほど相手の意見や思いを聞き取ろうとする。
そして多分、先生にとってはこれが普通なのだろう。
「先生、ありがとうございます、改めてよろしくお願いします」
「ありがとうケイト」
先生、その笑顔は駄目です。
そんな信頼と愛情を満遍なく詰め込んだ笑顔を向けられたら。
私はどうにかなりそうです。
「分野が片寄りすぎててな、本当に助かるよ」
だから、その無防備な右腕をいただきます。
「任せてください」
絡めた腕を強く抱き締める。
「先生、早速ですが現地に連れていって下さい」
大きな獣が土を耕している。
「あれは?」
「巴が拾ってきた魔獣だ。魔法を使って岩を砕いたのがポヨミ、もう一頭の方がポヨスケ」
魔獣が普通に農業を手伝っている。
流石先生の村。
「ちなみにあいつらは、ほぼこちらの言葉を理解している。普通に意志疎通ができるからな」
先生が手を降ると、二頭とも作業の手を止めて手を振り返してきた。
これは素晴らしい!
力作業が必要な場面なんていくらでもある。
ポヨミさんとポヨスケさんは大きな戦力になりうる。
「先生、素晴らしいですね!」
「え?」
「?」
「ま、まあケイトがそう思ってくれるなら、あいつらも喜ぶだろう」
「私も土をみてきてもいいですか?」
これだけの規模だ。
色々なことができそうだ。
「どうだ?」
「少し待ってください」
とりあえずは5箇所。
水の方は後でいいか。
よし行け。
「あれは?」
「
「集めた情報はどこで処理している? 膨大な量になると思うのだが」
流石、先生。
質問が情報処理の方法とは。
今の説明だけでこの魔法の意味を理解できていることか。
「私が」
「ケイトが? 吸い上げられる情報は膨大な量だろ。個人の頭の中で処理するには多すぎないか?」
「あらかじめ、項目や用途を指定して情報を集めさせていますから」
「それでもだ。たとえある程度厳選されているとしても、寄せられる情報量は膨大なはず」
この魔法の意味をここまで理解できるなんて。
ならば処理の方法について直ぐに答えにたどり着くな。
「いや、そうか! 申し訳ない、これ以上の詮索はマナー違反だな」
流石先生。
「別に構いません。スキル名は百頭、多くの情報を同時に処理する能力です」
もちろんそれだけではないのだが。
今この場所ではこの説明で十分だろう。
先生も気にしていないようだし。
「ここの土はとても良いもののようですね。かなり多くの種類の農作物が栽培できそうです」
「そうか、なら農業をやろうとしてる人たちがいるんだ。彼等と相談して方向を決めてくれ」
「私が?」
「無理か?」
あなたは本当に!
なんという眼で私を見つめるんですか。
「いえ、任せてください」
わかりました。
ならばあなたの信頼に全力で応えましょう。
私の一生をかけて。
あなたの隣でその眼に応えつづけましょう。
これからよろしくお願いしますね、先生。
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