第109話

「姉様!」


「ヘレナ!」


「ケイト、母様」


 ケイトか嬉しそうに泣いている。

 いい顔だ。


「ニノン! ナノン!」


「サベローシラ」


「お父さん」


 サベロー、アウト!

 おまえマジか!?

 地球でお前が夫婦で歩いてたら、一瞬で通報されんぞ。


「サベローシラ、少し年を取った?」


「お父さん、ちょっとおじさんになった?」


「そりゃそうだ。ニノンとは200年、ナノンとも100年ぶりだからな」


 サベロー、少なくとも200歳越えか。

 精霊種ってのは本当に長寿なんだな。

 しかし、それでもあの奥さんの見た目はなぁ。

 サベロー、アウト!


「そんなに泣かないで、私はここにいるわ。もうどこにも行かないから」


「そうだよ、お父さん」


「ああ、そうだな。二人とももっと顔をみせてくれ」


 ま、なんにしてもサベロー達も嬉しそうで何よりだ。


 続々と女性が出てくる。

 家族がここにいるのは三人だけか。


 サベローの奥さんの前三人が300年前と400年前、500年前か。

 となると、それ以降は600年前とかか?

 長寿といえど流石に厳しいか。


 ん?

 なんか最後に男が出てきたぞ。


「やあ、はじめまして。サシチ・ヒダリ様でよろしいのかな?」


「はい、そうですが。あなたは?」


「失礼、こちらから名乗るべきでしたね。私はパーシカエア・ドルダーニ。パーシーと呼んでください」


 嫌な予感がする。

 なんというか雰囲気がルド達に似ている。


「まさかガンドラル様に会えるとは」


 爺さんを知ってるのか。


「ドルダーニさん」


「パーシーです」


 目が怖ええよ。

 なんで苗字で呼んだらだめなんだよ。


「失礼、パーシーさん」


「なんでしょうか?」


「あなたもあの知霊樹に?」


「知霊樹? ああ、108号のことですか」


「108号?」


「そうです。生体補助型演算装置108号です」


 予想通り生体利用の演算装置だったか。

 というかパーシカエア?

 もしかして……。


「失礼ですがパーシーさん、『生体利用による思考の拡大』という書物をご存じでしょうか?」


「私が書いたものですね」


 やっばりか本人かよ。


「あのもしかして、あの理論をご自身で実証したのでしょうか?」


「その通りですよ、完成した108号に自分を取り込ませました。ただ予想外だったのは私の意識が内部に残らなかったことですかね」


 これ絶対にダメなやつだろ。


「どこに問題があったのでしょうか?」


 生きてる人間を取り込むところじゃないでしょうか?


「取り込むところまでは問題なかったわけで。うーむ」


「後は能力も思ったほどではなかったな。しかも定期的に取り込む人間を要求するという悪癖までついていたぞ」


 なんか増えたぞ。


「失礼、私はレトラント・ドルダーニ。108号から救出してもらったこと感謝している」


 ドルダーニってことは、パーシーさんの身内か。


「我妻よ、どう言うことだ?」


「どうもこうもない。108号はお前を取り込んだことで人を取り込めば自分の能力が拡大することを学んでいたのさ」


 なるほどね。

 自分の能力を拡大できる方法を淡々と繰り返してたってことか。


「そして取り込んだ相手を消化しきると、次の相手を要求してくるようになっていたのさ」


「我妻、もしかして君も?」


「108号に呼ばれてな。私はてっきりお前が私を呼んでいると思って承諾したんだが、取り込まれてみれば自我を保つこともできなかった」


「ふーむ、私だけでなく君もか。となると、属性や性別関係なく自我はなくなるということか」


「そうだ。もちろん他の取り込まれた人達から聞き取りが必要だが、108号は大きく見直していかなくてはならんな」


 回りはみんな感動の再会。

 ここだけ狂人同士の再会かぁ。

 こいつら多分外には出せないな、危険すぎる。


 ……ウチで引き取るしかないか。

 混ぜると危ないものばかり増えていく。

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