第106話

 あれか?

 転移の魔方具か。


 使えねーだろ。

 仕込まれてた転移妨害魔方陣の効果を広げてやったからな。

 今のうちに、あの魔方具の転移場所を変更して俺の目の前に。


 魔方陣の範囲を戻して、これで魔方具が使えるだろ。

 お、魔方具が発動したみたいだな。


「あーあ。折角、身代わりの腕輪を大量に売り付けたのにな」


 こっちに気付いてないのか?

 あの魔方具、転移後すぐは回りが見えないのか。

 それにしても身代わりの腕輪ねぇ。


「そうですね、彼等がなにをするのか見てみたかったのですが」


「ここにはなんかヤバそうな奴がいるみたいだし、しょうがないよね」


「次の場所でまた色々やってやりましょう」


 影でこっそり色々やってニヤニヤしたいタイプなのか?

 たしかに、イタズラとか楽しいよな。


「皐、ここどこ?」


「わかりません、家に転移したばすなのですが……」


「黒幕ごっこ?」


「な、きさぱ」


「おぱ」


 腕輪が砕けた?

 そしてこの変な感じの手応え。

 そういや、おんなじような手応えの奴等がいたよな。


「今までの違和感の正体はその腕輪か」


 コイツを大量にばらまいたとか言ってたな。

 面倒事は勘弁してくれよ。

 それにしても安全なところにいればいいのに。

 なんで現場を見に出てくるのかね?


「一々見にこなけりゃいいのに。イタズラの結果は気になるから仕方ないのか?」


 まあ、気持ちがわからなくも無いんだけど。

 イタズラはやっぱり結果を見なけりゃ面白くないからなぁ。


「この」


 声出しちゃったら不意打ちにならなくね?


「ぶぺ」


 お、味方を見切って逃げるか。


「あなたはかなり強いお方のようだ。ですがまだまだですね」


 余計なこと言うのは決まり事なのかね?

 余裕あんのか、ないのかよくわからん奴だな。

 わざわざ逃げるの知らせないほうがいいだろうに。


「なっ」


 目の前で展開されたら、魔方具の転移座標が見えるしな。

 先回りになったのは魔法のほうが早いってことなのか?

 アジトまでの案内感謝、お役御免だ。


 普通の手応えだな。

 起き上がって来る様子もないし。

 新しい腕輪がなかったのか、連続使用できないのか。

 色々漁ればなにか出てくるかね?


 あるのは魔方具と金と設計図のラフか。

 知霊樹を演算装置がわりにしてコイツを形にしていったみたいだな。

 しかしあいつらどこで知霊樹が、演算装置変わりになると知ったんだ。


 あのご老体達か?

 それはなさそうだ。

 ラフを見ると、あの巨大ロボに自爆装置まで仕込んであるしなぁ。

 自分達の足元にわざわざあんなもん取り付けないだろう。

 しかも書いてある通りなら、ラグレシュルの街が吹っ飛ぶ威力だ。


 てことは他に入れ知恵した奴がいるのかね?

 なんにしても、これ以上なにかわかることも無さそうだ。

 やれ山賊だ、やれ魔獣だと何かあっても困るし、アジトごと消しとくか。


 おっし、掃除完了。

 急いで戻らないとな。



 ラグレシュルの街が火の海なんだが……。  

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