第105話 とある二人の見た悪夢

 

 私達の仕込んでいた仕掛けが始動したようですね。


「あの街も終わりですね」


さつき、あそこの街が無くなるのは結構痛いよね」


 たしかにかけるの言うとおり。

 魔方具生産の一大拠点が無くなるのは痛いですね。

 ですがあの仕掛けが始動してしまった以上は、仕方がないでしょう。


「それに想定していたよりかなり早くない?」


 たしかに、あれが暴走するのはもっと先のはず。

 暴走を遅らせるため新しい生け贄の手筈も整えたのですが……。


「暴走が原因じゃないってことは考えられない?」


「あの老人達が、防衛装置として起動させたということですか?」


 となると想定外の魔獣か外敵でしょうか。


「まあ、なんでもいいか。それよりも、あれが動いてる所を見に行こうよ」


「そうですね、ことが終わったあとのことも考えなくてはいけませんし」


 仕掛けが作動したということはあの街も無くなるでしょう。

 街の跡地は有効に使わないといけませんしね。


「あの人達は面白いくらい、良いように動かせたんだけどなぁ」


 あの老人達はどうしようもないくらい扱いやすかったですねぇ。

 あのような権力欲と物欲の塊に治められている、思考停止の住民が集まっている土地が他にもあると良いのですが。


「楽しみだねぇ」


「そうですね」


 強大な暴力に蹂躙される人々、破壊され尽くす街。

 想像するだけでゾクゾクしますね。

 ラグレシュルの最後を最高の場所で拝見しに行きましょうか。




「あ、やってるやってる」


 あの巨大な人形こそラグレシュルに破壊と滅びをもたらすもの。

 さあさあ、私を楽しませてください。


「でもあんまり街とか壊れてないね」


 たしかに、街の被害が少ないですね。

 というかあの場所からほとんど動けていませんね。

 何かに足止めされているということでしょうか?


「あいつら何と戦ってるんだろうね?」


 あのご老人たちが、敵わないような相手ということになるのでしょうが……。

 特に魔獣や魔晶獣がいる気配もないてすし。


「え!?」


「は!?」


「いきなり左腕がとれたよ。しかも消えた!」


 彼等は何と戦っているんですか!?


「今度は右腕! また消えた!?」


 この展開は想定外過ぎますね。


「足もなくなった」


 あれがなにかを破壊する前に無力化されますか。

 流石に異世界ということなのでしょう。


「あ、あいつら脱出したよ」


「自爆装置が作……動する前に、胴体も消えてしまいましたね」


「ど、どうしようか皐」


「決まってますよ、ここは撤退します。ここまで不確定要素が大きいと対処のしようもないですからね」


「わかったよ」


 ???


「どうしたの皐」


「転移結晶が起動しません」


「もう一度やってみたら?」


「……どうやら起動したようです」


「じゃあ、さっさといこうよ」


「そうですね」


 あれは、人?

 こちらに気付いている?


「あいつがあれを消した犯人かな?」


「わかりません。ですが転移結晶は発動していますし、なにもできないでしょう」


 一体何者でしょうね?



「あーあ。折角、身代わりの腕輪を大量に売り付けたのにな」


「そうですね、彼等がなにをするのか見てみたかったのですが」


「ここにはなんかヤバそうな奴がいるみたいだし、しょうがないよね」


「次の場所でまた色々やってやりましょう」


 ?

 ここは何処ですか?


「皐、ここどこ?」


「わかりません、家に転移したばすなのですが……」


「黒幕ごっこ?」


「な、きさぱ」


「おぱ」


 なんなのですかコイツは、身代わりの腕輪が一撃!?


「今までの違和感の正体はその腕輪か」


 まずい。

 次あれを食らえば確実に死ぬ。


「一々見にこなけりゃいいのに。イタズラの結果は気になるから仕方ないのか?」


 何とかこの場を切り抜ける方法は……。


「この」


 翔、ダメです!


「ぶぺ」


 ならばこの隙に転移結晶で。


「あなたはかなり強いお方のようだ。ですがまだまだですね」


 とんだ邪魔が入りました。

 翔は残念ですが、いままで稼いだ金と売り払っていない魔方具があれば、私一人でも再起は容易いでしょう。


「なっ」


 なぜここに?

 どうやって?

 こ、拳ぁぁ!!!


 本当にとんでもない化け物ですね。

 私達にとってはまさに悪夢ですよ。

 あの世があるなら、あの世では覚めててほしいものですがね。

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