第92話

 景色が一変してるんだが……


「レイラさん、あそこのナディとランガーが打ち合っている場所は?」


「鍛練場だそうです」


 かなり広くないか?

 ああ、でもあれぐらい必要みたいだな。

 派手な攻撃手段も多いしな、あれぐらいは必要か。


「ルドこれはなんだ」


「書庫ですね」


「爺さんのとこにあったやつに似てるんだが」


「あそこから持って来ましたから」


 ……。


「レーブ、これは?」


「工房じゃな」


「爺さんのところで見たことがあるんだが」


「あそこから持ってきたからな」


 ……。


「レイラさん、短時間で庭園と屋敷が完成してるんだが」


「お庭は私が作りました。植える樹木や草花は庭師に頼まないといけませんが」


 庭は?

 ということは屋敷は……。


「書庫と工房と一緒に持って来ましたよ」


 ……。

 自由に行き来できるのかよ!


「封印されてるんじゃないのか?」


「あのお方はされていますよ。ですが、我らは関係ありませんので」


 封印の意味あるのかね?

 下手すりゃ爺さんも出てこられそうだな。

 流石にそれは無理か。


「本気で出ようとするのであれば、出てくることも可能ですよ」


 封印意味ないのかよ。


「封印と言っても何かに封印された訳ではありませんし、御自分で約束という形をとって引きこもっただけですから」


 暴れるだけ暴れて引きこもりって、本当に無茶苦茶な爺さんだな。


「ただ、主との闘いはかなり堪えたようですよ。多くの時間を休眠に当てているそうです」


 ふつーに会話もしてきたのかよ。


「書庫やら工房の件はわかった。だがな、なんで家の庭の噴水に爺さんの像が鎮座することになった?」


 しかも美化されて凛々しくなってやがるし。


「寝てばかりも退屈だそうで。あの像を通して世界を覗き見するそうです」


「覗きの道具なんて不埒なもん、人の家の庭に作るなよ」


「退屈だから暴れるにくらべて、かなり成長したと思いませんか?」


「なんの話だよ。成長って言葉の使い方間違ってないか?」


「成長でなければ進化ですか」


「暴行が覗きに進化って、もう最低すぎる進化だな。その進化の要因は一体なんなんだよ」


「敗北ですかね」


「原因、俺かよ。神を変態に進化させた男とか嫌すぎるわ」


「流石は我が主」


「そこを称えられても、全く嬉しくねえよ」


「なんにしても、あのお方が出てこられて問題を起こすよりは、よほど良い状況かと思います」


「たしかにそれは否定できないが」


 神様にたのまれて神の像を庭に設置。

 ありがたいのか?


「爺さん祭ったらなんか御利益でもあるかね」


 ……なんの御利益もなさそうだな。

 設置の目的も覗きだしな。

 やっぱりいらねえわ。


「諦めも大切ですよ」


 うるさいよ。


「爺さんの像の件は納得いかないが了解した、爺さん貸し一だからな」


 像の目が緑に光った。


「どうやら肯定したみたいですね」


「わかるのか?」


「否定なら目が赤く光るそうです」


 なんかの玩具かよ。

 全然有り難みのない神の像だな。

 なんかもう疲れたよ。


「あなたお疲れですか?」


「ありがとうレイラさん。とりあえず問題ないよ」


 ほぼ、ルド達が原因の心労だからな。


「では次は必要な物資や人材の確保に行きましょう」


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