第93話

「お久しぶりです、ヒダリ村長」


「お久しぶりです、エーラ市長」


 こんなこと言える立場じゃないが、器と能力に経験と責任が加わってきたのかね。

 この短期間で随分たくましい顔つきになったな。


「ガンドラル村の候補地はいかがでしたか?」


「なんとか村を作ることができそうです」


 空に浮いてたり、神様の覗き行為専用の像があったりするけどな。


「それは素晴らしい。それで本日はどのようなご用件ですか?」


「必要な物資の購入と必要な人材探しですね」


「物資についてはこちらで用意できるものであればリーラに確認してください。人材に関しては流石に引き抜きはご遠慮頂きたいですね」


「学園や街の運営に携わる方の引き抜きは、考えていませんよ」


 流石にそれはな。

 後々禍根を残しそうだしな。


「ただ、学生や街の住人には声をかけさせてもらいますよ」


 この街は移住の自由が保証されてるらしいからな。


「それに関しては、私共に止める権利はございませんのでご自由にしていただいて結構です」


 特に抵抗はなし、表情にも声色にも変化なし。

 流石はレイラさんの後を次ぐ逸材。

 それとも、めぼしい人材はすでに囲ってあるから余裕ってことかね。


「ありがとうございます。それでは物資の交渉担当以外は失礼させていただきます」


 市長から許可も得たことだし、色々探しにいきますかね。




 ん?

 あの猫耳は……。

 スルーだな。


「あ、左の字」


 巴もいたのか。

 嫌な予感が。


「村長、ちょうどいいところに」


 たぶん駄目なやつだろ、これ。


「どうした?」


「紹介したい人がいるんだよ」


 俺の中の警報が、がんがん鳴ってる。

 これはヤバイ。


「俺の知り合い、と言ってもゲームの中でだけなんだが」


「レイラさんが、左の字の補佐ができそうな人って言ってたからさ。チョコ太さんのクランのサブマスターをやってた人なんだけど」


 チョコ太さんのクラン……。


「ピョン次郎だ」


 はい、アウトー。

 ウサミミ、ふわふわ尻尾、身長190cmくらい、ごつい体格のスキンヘッド。

 ある意味期待通りだよ。


「はじめまして、相良さがら剛治郎ごうじろうといいます」


「はじめまして左佐七です」


「そいつのサブマスターとしての能力はピカ一だった。もちろん村の運営となると違うことも多くあると思うが、ピョン次郎はかなり役に立つと思うぞ」


「お褒めに預り光栄です、チョコ太さん」


 くそ、なんだこの会話。

 ごついおっさん達がチョコ太とかピョン次郎とか。

 しかも猫耳とウサミミとか。

 最悪の絵面だろ。


「いきなりの話で驚きましがチョコ太さんのお話を伺いました。もし左様がよろしければ、私にもお手伝いさせて頂けませんでしょうか」


 俺はあなたのその姿に驚愕しています。

 スキンヘッドにウサミミって。


「左の字、ボクからもお願い」


 はあ。

 こうなったら巴は何言っても連れてくるだろ。

 そしてビジュアル面は厳しいが、能力面では巴の目は確かなんだよな。


「わかりました。相良さん、よろしくお願いします」


「ありがとうございます!」


「ありがとうな村長」


 ウサミミおっさんが仲間になった!

 巴さん、これ以上曲者は増やさないでください。

 それが無理なら、獣耳のついたおっさん以外でお願いいたします。

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