第89話

 激戦だったよ。

 ポヨミめ。

 やつのせいでとんでもない目にあった。


「よう、大将。毎日がんばってるな」


 うるせーよ。


「お、村長。毎日忙しそうだな」


 うるせーよ。

 ごついおっさん二人とか。

 朝一からなんか暑苦しいよ。


「ルルの嬢ちゃんに頼まれてこれを作ってみたんじゃが」


「なんだこれ? 掃除機か?」


「ソウジキがなにか知らんが、ゴミを吸いとる道具じゃな」


「こういう道具って以前から無かったのか?」


「ワシは知らんな」


「俺に聞かれてもわからんぞ。知ってることなんて、村長とたいして変わらんだろ」


 こういった家電的なものとかあんまり見ないんだよな。

 魔動機兵やら空中戦艦やら作れるなら、簡単な気がするんだがな。

 魔獣やら魔晶獣やら他国やら、随時戦闘に追われる状況だとこうなるのかね。

 命を守るのが最優先だし、しょうがないのか?


「それで出来具合は?」


「今から試運転じゃ」


「お、面白そうだな。村長、俺も見せてもらってもいいか?」


 秘密にするもんでもないだろうしな。


「レーブ?」


「かまわんよ」


「レーブさんありがとう」


 チョコ太さんはうちの眷属は全部さん付けなのかね。


「よし、とりあえずはそこに落ちとる枝や葉っぱで、やってみるぞ」


 お、吸い込む吸い込む。


「これどうやって吸い込んでるんだ?」


「セフィの嬢ちゃんに協力してもらって作った、吸引の魔方具を中に仕込んである」


「吸い込んだものは?」


「ルドの時空魔法を仕込んだ魔方具で消滅させとる」


 えらい物騒な掃除機だな。


「レーブさん、そろそろ止めないと。なんか色々吸い込みはじめてるぞ」


 そうだな。

 枝や葉っぱだけじゃなく、石ころとかも吸ってるな。


「そろそろ止めるか」


 ん?

 止まるどころか吸い込む力が強くなってねーか?


「む?」


 おいおい。

 落ちてる物じゃなくて、地面そのものを吸いはじめだぞ。


「むむむ」


 むむむ、じゃねーよ。

 小さいクレーターみたいになってきたぞ。


「まずい事になったようじゃ」


 見りゃあわかるよ。

 周りの木とかも吸い込まれてるしな。


「ぬおおおお、さらに強く!」


「レーブ! そいつから手を離せ。ぶっ壊すぞ」


「そうしたいのは山々なのじゃが、手を離すとワシも吸い込まれる」


 使ってる掃除機に吸い込まれるってどんな状況だよ。


「まずいぞ村長、俺たちも吸い込まれそうだ」


 知ってるよ。

 さっきから徐々にレーブの方に引き寄せられてるからな。


「レーブ、もし手がなくなったら後で治してやるから我慢しろよ」


 うおっと。

 結構強く引っ張られるな。

 よし、掃除機にうまく拳が入った。

 後はそのまま削り取るっと。


 レーブの手も無事だ

 なんとかなったな。


「うーむ、やはり二つの魔方具を同時に操作は難しいようじゃな」


 うん、まあ反省とか謝罪の言葉とかは無いと思ってたよ。

 多分、腕一本落ちててもおんなじこと言ってそうだからな。


「レーブ。吸い込んだ物を消滅じゃなくて、別空間に放り込んだらどうだ? 空間の入り口を板かなんかで閉じるようにしとけば、時空属性の魔方具は操作不要だろ」


「ゴミのたまった空間はどうするんじゃ?」


「取り外しできる小さな箱に空間を仕込んで、ある程度たまったらその箱を外せるようにして、外した箱を消滅させればいいんじゃねーか?」


「なるほど、それならあの移動式天幕と周りのあまり変わらんな。すぐにでも取りかかってみるか」


 掃除機かぁ。

 自動で動くやつも欲しいな。

 異世界ライフ充実のためにも、他の家電なんかも色々再現してみるのも面白そうだね。

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