第86話

「さて、みんな狩りについて話がある」


 ノーナ女王達の話だと、この森の魔獣はなかなか強敵揃い。

 なので素材はかなり珍しいらしい。

 したがってお金にもなるって話だった。


「金策もかねて道中、狩りをしながら進みたいんだが」


「はい、1ラル」


 どっから出てくるんだよカシュタンテ。

 わかった、そうだな、金の話をしたからな。

 ありがたくいただく、いただくから顔にグリグリしないでくれ。


「旦那さま、お金ならかなりの金額を持っていたはずでは?」


 今は持ってるさ。

 今はな。


「この先何があるかなんてわからんし、例えばだクリスの案内しようとしている場所に畑はあるか?」


「ありませんね、食料はその辺で捕まえてこれましたし」


「この人数を、狩りだけで賄い続けるのはなかなか厳しいだろ」


 俺は毎日肉だけの食事は避けたいからな。


「それでだ、村を作るにあたって畑だけでなく、色々な物が必要になるだろ? そういった物をその都度揃えるためにもお金があって困ることはない」


 たとえ自給自足が中心の小さな村だったとしても、初期費用はかなりの額がかかるだろうしな。


「別にお金で手に入れなくても、奪うだけで良いのでは?」


 クリスとポンコツ四人衆。

 不思議そうな顔してんじゃねーよ。

 俺はできる限りは平穏に楽しく生きていたいの。


「時と場合による。基本的には争いごとは避けていきたい」


 俺は売られた喧嘩は買うが、基本的に争いごとなんかはめんどくさいから避けたいんだよ。


「旦那さまがそう言うのであれば」


「それにな、そんな殺伐としたことに時間を使うよりも、みんなとこうやって話して騒いだほうが楽しいだろ」


「旦那さま、狩りも十分殺伐としていますよ」


 ちっ、気づいたか。

 細かいことはいいんだよ。

 というかクリスに突っ込まれたよ。

 何気にけっこう凹むなおい。


「あとはほら、俺達に子どもができた時のためにもさ。蓄えはあったほうがいいだろ」


 これならどうだ?


「そうですね! それは大事なことです」


 よし!


「では早速」


 あれ?


「御屋形様、ご武運を!」


 うるせーよ。




 誤算だった。

 朝から激戦だったよ。


「それで狩りの話だ」


「僕?」


 そうだよ。

 お前だよ。

 出る獲物出る獲物、全部消し飛ばしやがるからな。


「いいかリシャル。狩りの時は獲物を消し飛ばすな」


「?」


 なんで?

 みたいな顔してんじゃねーよ。

 お前、さっきの話全然聞いてないだろ。


「あのな、今回狩りをするのは、魔獣の牙やら皮やらを売るためだ。そこはわかるか?」


「わかるよ」


 わかってたのかよ。


「その為には魔獣を倒したときに、売るための体の部位が残っていないといけない」


「そうだね、全部吹き飛んじゃったら売る部位が残らないね」


「そうだ。だから今後狩りの時は、きちんと売るための部位を残してくれ」


「わかったよ、ご主人さま」


 ホントに通じたのか?

 全く信じられないが信じるぞ。

 くそ、不安要素がありまくるが進むしかないか。

 後は現場で調整だ。

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