第67話
『なに? なに?』
とりあえず落ち着いてもらわないとな。
話にならん。
『落ち着いてください。先程、貴女を襲っていた相手は私達が撃退しました』
『そうなの? え、機械言語? あなたは誰? 私の言葉がわかるの?』
『落ち着いてください。私の名前はサシチ・ヒダリ。驚かせてしまって申し訳ない』
『ヒダリさん?』
『言葉が理解できるのは、たまたま学ぶ機会があったからです。実際に機人族の方とお話するのは初めてなのですが、私の言葉は間違っていませんか?』
『大丈夫。ちょっと固い感じもするけど、綺麗な機械言語』
『それはありがとうございます』
少しは落ち着いてきたかな?
『ふう。助けてもらったのに取り乱してばかりでごめんなさい』
『いえ、気になさらないでください』
『おかげで少しだけ落ち着きました。改めまして、私はポピレナシア・ヒャタフリフ。ヒダリさま、危ないところを助けていただき、ありがとうございます』
どうやら普通に話してもらえそうだな。
「佐七さん、何を話しているんですか?」
「主さま、それもしかして機人種の言葉?」
「ヒダリ殿は機人種の言葉がわかるのか?」
「ある程度だけな」
あまり広く知られている言葉じゃないのか?
『ヒャタフリフさん、共通語はわかりますか?』
『話せませんがなにを言っているかはわかります』
ということはある程度のコミュニケーションはとれるってことか。
「彼女はヒャタフリフさん。話すのは難しいが、みんなが何を言ってるかはわかるらしい」
『よろしくお願いいたします』
ヒャタフリフさんが手の上でちょこんと頭を下げた。
「よろしくだってよ」
キョウが近づいてきた。
巴と厳丈さんは反応しないのか?
どうやら奴らの可愛い理論にはひっかからないらしい。
「機人種というのですか? なんというか妖精みたいですね」
確かに、俺たち地球出身者からすればそんな感じだな。
「我ら妖精種にも似たように小さなもの達がいるが、我も機人種でこのような小さな方を見るのは初めてだ」
いるのか小さい妖精。
「私も機人種の方とは何度かお会いしたことがありますが、このような小さな方は始めてみました」
異世界の中でも珍しい存在なのかね?
『私達族は数が少ないから』
「ヒャタフリフさんの種族はあんまり数が多くないらしい」
希少種ってやつか。
てことはろくでもないことを考えるやつも多そうだ。
「こういう言い方は失礼かと思いますが、ヒャタフリフさんはここで何を?」
『その、私達の集落が襲われてね』
やっぱ、そういうことに巻き込まれるよなぁ。
ポタ族といい、見た目で狙われる種族ってのがけっこういるのかね。
「愛玩用に連れ去られたとか?」
『愛玩用ではないんだけどね。私達のもつ能力に目をつけられちゃったみたい』
種族の集落ごと狙われるような能力ねえ。
『それでまあ、捕まった先からなんとか逃げてきたらあの魔晶獣に襲われたって感じかな』
なるほどねえ。
「ヒャタフリフさんの集落ごとなにかに捕まったらしくて、そこから逃げてきたところでさっきの魔晶獣に襲われていたそうだ」
「その捕まった他の方々は大丈夫なんですか?」
『多分殺されたりってことは、ないはず』
「命の心配はないそうだ」
まあ、命が無事だからそれでいいかと言われると、微妙なところだけどな。
「ご主人様、なんか白い魔動機兵が3機こっちにくるよ。何かを探しているみたい」
追っ手かな?
「こっちに気づいた。魔方陣を展開したよ」
光の矢じりが飛んでくる。
問答無用で攻撃かよ。
「リシャル」
「もうやってるよ」
3機の魔動機兵の胸部に大きな穴が開いていた。
「あの機体……。ヒダリ殿少々不味いかもしれん」
「なにかあるのか?」
「あれは光神教の神兵専用機だ」
光神教?
宗教かよ。
確かにめんどくさいことになりそうだ。
「ヒャタフリフ殿、あなたの集落を襲ったのはもしかしてあの機体の連中か?」
『私達の集落を襲ったのはあいつらだよ』
「あれに襲われたそうだ」
「もうひとつ教えてくれ。あいつらの機体の数は?」
『正確にはわからないけど10機以上はいた』
「10機以上にはいたってさ」
「なおさら不味いな、経緯はどうあれ奴らに攻撃の口実を与えてしまった」
攻撃の口実ね。
いきなり魔法ぶっぱなしてくるし、物騒な宗教だねえ。
「そんなにめんどくさいのか?」
「ああ、めんどくさい」
ならやることは一つ。
叩き潰すか。
「ヒャタフリフさん、あなたの仲間たちもあいつらに捕まっているんですよね」
『はい』
「ならついでにまとめて救出しちまおう」
『え?』
さて証拠隠滅だ。
サクサク潰していきまっしょ。
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