第66話

「旦那さま、本当に徒歩で向かわれるのですか?」


 クリスが言っていた領地の候補先までは結構な距離があるらしい。


「なにか急ぐ理由があるわけでもないしな、のんびりこの世界を堪能しようかと思ってな」


 折角の異世界。

 のんびり歩いていれば、なにか面白いものが見られそうだしな。


「悪いな、俺の我が儘に付き合わせる形になっちまって」


「いえ、それならばそれで私も旦那さまとの旅路を楽しむまでです」


 クリスが腕を組んでくる。


「そうですね、ゆっくり一緒に歩くのも楽しいですよね」


 キョウが空いた方の腕にしがみつく。


「1ラル」


 カシュタンテ、相変わらずマイペースだな。

 そして顔にグリグリするのはやめてくれ。


「な、カシュタンテ。ずるいぞ! そこは我が狙っていたのだ」


 狙ってたのかよ。


「まあまあ、3分で交代なのだから。少し待てばいいだけでしょう」


「うむ、そうなのだが」


「というわけで、次は私ですのでよろしくお願いしますね、あなた」


「な、凶壁ずるいぞ」


「では次は私でお願いします、サシチ様」


「セフィまで」


 背中の取り合いとか。

 子どもかよ。




 ん?

 爆発音?


 リシャルが近くの木に登る。


「リシャルなにか見えたか?」


「うーん、魔獣ぽいのがなにかを追いかけているみたい」


 ぽいとなにか、か。

 もちっと近づいてみるかね。


「近づいてみる、上から指示してくれ」


「わかった」


 爆発音が近づいてくる。


 なんだろね?

 あの機械ぽい魔獣。

 なんかピンクのちっこいのが襲われてるみたいだけど。


 あっ、落ちた。


「リシャル、魔獣みたいなのはあの3匹だけか?」


「とりあえずはそれだけみたい」


 あのピンクはなんだろね?

 魔獣みたいなのも気になるし、側で見てみるか。


 魔獣の一匹と距離をつめる。

 んー、半分機械な狼って感じか。

 さすが異世界ってところなのかね?


 こっちに気づいたか。


 落ちてるピンクをポケットに突っ込む。


 おいおい、異世界の生き物はとんでもねえな。

 背中から複数の銃口がでてきやがった。

 ここまでくると魔獣というよりロボットにしか思えんわ。


 それぞれの銃口に魔方陣が展開し弾丸をばらまいてくる。

 気にせず突っ込み、狼もどきの顔面に拳を叩き込む。

 地面に叩きつけられ狼もどきは、そのまま動かなくなる。

 同時にリシャルが放った魔力の塊が残り二匹を吹き飛ばした。


「ご主人様、お疲れ〜。あんまり強そうでもなかったけど、どうだった?」


「強くはないが、なんか変な感じだったな」


 ぶん殴ったやつを調べてみるか。


「あれ? ご主人様の倒した奴が消えてるよ」


 確かに。

 俺がぶん殴ったやつが消えている。


「なにか落ちてるよ」


 狼の消えた辺りに石ころが落ちている。

 これ闇の眷属の時と同じパターンか?


「あなた、それは魔晶石ですよ」


「魔晶石?」


「そうです。そして先程の魔獣は魔晶獣かと」


「魔晶獣?」


「はい、魔力を元にして作られた元兵器です」


 魔晶獣に元兵器ねぇ。

 ルドのとこの資料にはなかった話だな。


「その魔晶獣ってのはなんなんだ?」


「それはですね」


『ここはどこ?』


 機械言語?

 ポケットからか?

 さっき拾ったピンクのやつか。


『何がどうなってるの?』


 ポケットからピンクの髪の小さな女性が出てきた。

 さすが異世界驚くことに事欠かないな。

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