第30話 ルルの想い その2

 

「まったく。失礼な輩でしたね、旦那さま」


「まったくだ。サシチ様を侮辱するわ、聞き苦しいことをわめき散らすわ」


 まったくです、セブンに向かってそんなやつとか失礼なやつでした。

 消し炭になってしまいましたが。

 それよりも先程からあの赤い髪の女性が、セブンを旦那さまと呼んでいる気がするのですが。


「ところで旦那さま?そちらの三人は?」


 やはり気のせいではないようです。


「左の字、その二人は一体?」


 そうですね、是非とも聞きたいところです。


「わかった、説明する。でもその前に覗き見してる変態を駆除してからな」


 ?

 セブンがすぐ近くの空間から、なにかを引っ張り出しました。

 え?


「クロリックさん?」


「いたた。やあ、ルル元気だったかい」



 出てきたのは闇の女神さまの眷属で、戦闘の訓練の時にお世話になったクロリックさんでした。


「ドウシテこんなところニ?」


「相変わらずちょっと変わった話し方だねルルは」


 そう、ガンドラル語を教えてもらったのが日本語ベースだったので私の言葉は、母国語訛りの日本語ベースなガンドラル語。

 なのでちょっと恥ずかしいときもある。


「ん?特長あって可愛いだろ、なんか問題あるか?」


 ああ、セブン。

 あなたは私の心を肩肘張らず構えず自然に、でもとても優しく満たしてくれる。


「ルルどうした?」


 なんでもないですよ。

 ただ、嬉しいだけですよ。

 ただ、あなたの一言で、とても満ち足りた気持ちになっているだけですよ。


「面白くないなぁ。先程のやつらもせっかくルルたち三人の場所を教えてやったのに、あの体たらく。まったく面白くならなかった」


 クロリックさんが私達の居場所を?

 なぜ?


「三人ともなぜ?って顔だね。理由は簡単だよ、そうしたらおもしろそうだったからさ」


 は?


「途中までは面白かったんだけどね。あのまま三人がボロボロになってくれるかと思ったらとんだ邪魔がはいったよ」


「どういうことデスカ!」


「どういうもこういうもないよ。君達三人をあいつらが襲って、君達がボロボロになるところを見たかったのさ」


「女神さまはコノコトを知っているのデスカ」


「さあ?もしかしたら知っているかもね?でも人の一人や二人些細な問題だよ。多分気にもとめてないんじゃないかな?」


 え?え?


「理解が追い付いていないみたいだね?女神様にとっちゃ君らに力を貸したのはルールに縛られていたからで、女神様の意思じゃない。だから縛りがなくなった今、女神様はもう君達に興味はないのさ。たとえ傷つこうが殺されようがね」


 そんな……


「いい表情だ、そういう顔を見るのはたの、が」


 クロリックさんが地面にめり込んでピクリとも動かない。

 え?一撃?

 訓練とはいえ私達10人がかりでも1度も攻撃がかすりもしなかったのに、一撃?

 どれだけの強さなんですかセブン。


「はあ、やっぱり女神もポンコツ揃いなのかね。三人とも、こいつら基本的にポンコツばっかだからいちいち気にするなよ」


 ああ、そのやさしい表情がまぶしいです。

 さっきまでの不安がたち消えていきます。


「な、なぜ傷がなおらない」


 よたよたと立ち上がったクロリックさん、かなり動揺しているようです。

 たったの一撃でここまで追い込むセブン、素敵すぎます。


「まあ、そういうこともあるんじゃね」


 セブンの拳が突き刺ささり、あっさり終わってしまいました。

 クロリックさんの体が消滅して足元に拳くらいの大きさの石が転がっています。


「これ休眠か?どうするんだろね?まだ意思だけはあるのかね?まあいいやこれ砕いて終わりかね」


「まて!」


 クロリックさんが引っ張り出された空間から今度は鎧姿の女性が出てきました。


 ナバーリュアさん?

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