第29話 告白と修羅場

「久しぶりだな、巴、ルル、キョウ」


 三人が飛びついてくる。


「旦那さま、そちらのお嬢さん達をご紹介いただけませんか?」


「サシチ様、私にもご紹介いただけませんか?」


 まずい。

 この空気はまずい。

 巴達も臨戦体制だ。


 ルド達は…、くそ、あのもふもふさん達の救助か。

 普段はいらん口はさんでくるくせに、なんでこういう時に誰も来ないんだよ。

 ポンコツ4人衆。


「巴さん、そいつは誰?」


 む、意外なところから乱入が。

 たしか最初に消し飛ばしたはずだが意外に頑丈なのかこいつ?


 んー、違うな。

 なにか手助けしてるやつがいるな。


「そいつは誰なのか聞いてるんだよ!」


 おおう、いきなりキレたぞ。


「なんでそんなやつに抱きついてるの?」


 初対面でそいつとかそんなやつとか、思ってても口に出さねーだろ。


「見てわからない? ボクはこの人のことが好きなんだよ。大好きなの。君達と出会うずーっと前から」


 ん、ずーっと前から?

 というか三人から肉食系のオーラを感じる。

 最後に会った時は、こんな感じじゃなかったような。


「そんなやつの何処がいいんだよ!」


 ホントに失礼なやつだな。


「どこだろうね? 気がついたら好きだったんだ」


「なんだよそれ! あの長い訓練のときも、こっちの世界に来たときも一緒にいたのは僕じゃないか。巴さんのために色々してきたのだって僕じゃないか!」


「ボクのため? ボクのために何かしたの?」


「訓練の計画だって、魔獣との戦闘だってなんだって巴さんのことを第一に考えて色々言ってきた」


「あれがボクのため? ボクがそれを望んでいたと?」


「そうだよ、巴さんのためだよ。いつだって僕は君のことを考えて」


「あはははは、あの偉そうに命令するのがボクのため? 君達はボクの、ボク達の話なんて何も聞いてなかったじゃないか! 一度でもボクたちに聞いたことがあったかい? 一度でもボクたちの意見を聞き入れたことがあったかい?」


 巴がなんかこええよ。

 色々ストレスだったみたいだな。


「それは」


「ないだろ? あれはボクのためなんかじゃない。君の自己満足のためだよ」


 はっきり言い過ぎ。

 惚れた女性に、お前の行為はただの自己満足とか

 きつすぎるな。


「そんなことはない! 僕はきみのことをこんなに想ってるんだ」


 あははははは。

 無いわー。


「なんでわかってくれないんだ!」


 いやいやいや、わかんねぇって。

 わかんねぇから、わかってもらえるように、努力しつづけるんだよ。

 自分が100の思い注いだから、相手からも100返ってくるとか。

 ありえねー。


 こいつ多分そこそこモテてたんだろうな。

 その辺努力しなくても、いつでも彼女できるし、みたいなやつだったのかね?


「わからないし、これからもわかる気はないよ。はっきり言わないと伝わらないみたいだから言うよ。ボクは君に魅力を感じていなし、これからも感じない。そしてボクの好きな人は、この人なの」


 なんだろな、巴がグイグイくる。

 ルルとキョウもさらに体を寄せてくる。

 普通なら嬉しい状況のばずなんだが、ライオンに囲まれたウサギの気分な気がする。


 この三人もヤバいぞって、

 俺の勘がガンガン警鐘ならしてるんだが。



「ふざけるなー!」


 なんかキレたぞ。


「見苦しい」


「な」


 お、セフィ、風の刃で袈裟斬りか。

 あれ、あんまり痛みないんだよなー

 すぐに死ねるけど。


「消し炭になってください」


「ぎ」


 おお、クリスの魔法もすげーな。

 このくらいのレベルのやつなら一瞬か。

 二人ともなんかいいコンビネーションだな。


「まったく。失礼な輩でしたね、旦那さま」


「まったくだ。サシチ様を侮辱するわ、聞き苦しいことをわめき散らすわ」


 そうだね、なんか失礼な子だったね。

 消し炭になっちゃったけど。


「ところで旦那さま?そちらの三人は?」


 ああああ、振り出しにもどった。


「左の字、その二人は一体?」


 こっちもか。

 さて、どうしようかね。

 言って、落ち着いてくれるかね?

 無理かな、とりあえず正座かな?


 んーでも、まずは覗き魔を退治かね。

 さっきからチョロチョロうっとうしい。


「わかった、説明する。でもその前に覗き見してる変態を駆除してからな」

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