第31話 石ころ

「まて!」


 なんかまた別のやつがあらわれた。

 あれか◯◯四天王とかいうノリか?

 勘弁してくれよ。


「その石をこちらに渡してもらえないだろうか?」


 え?

 挨拶もなしに、初対面の人にそれちょーだいはないだろ。

 なに考えてるんだ?


「えーと、申し訳ない。失礼ですがどなた様でしょうか?」


「私はナバーリュア。そいつを含めた闇の女神様の眷属をとりまとめている」


 おお、言ってみるもんだね。

 てか皮肉だったんだけどね。


「改めて、その石をこちらに渡してもらえないだろうか?」


「お断りします」


「な」


 や、ふつう渡してもらえないだろ。

 うちの四人とはまた別の方向でポンコツなのかねこいつも。


「そんなやつでも大切な同僚でな。死なせるには忍びない」


「お断りします」


「な」


 すごいな。

 無条件で返してもらう気満々。

 初めて会った相手にここまで図々しく出られるって。


「失礼ですがナバーリュアさんは事の経緯をご存じの上でこれを寄越せとおっしゃっているんですか?」


「ああ、私の部下が失礼をした。誠に申し訳ない、代わって謝罪させていただく」


 あ?

 知ってて放置してたってことか。

 やばくなったから助けに来たと。


「ルル達はこの方のせいで殺されそうになりました。他人の命を故意に危険にさらす行為を見逃しておいて、当人に命の危険が及んだらそれはやめてくれとおっしゃるんですね?」


「う」


「殺す側のときは見逃すが殺される側になったら放置できないと」


 無言になったよ、こいつ。

 もしかしてなにも考えてなかったの?


「はあ、もういいです。話にもならない帰ってください」


「しかし、そういうわけには」


「はあ、そんなにこれが欲しいですか?」


「ああ」


「では、交渉の席に闇の女神様をおつれください。もちろん今すぐ。それ以外では交渉する気はありません」


「それは難しい」


「では交渉決裂ですね」


 こいつ、剣に手をかけやがった。

 ほんとにポンコツだらけだな眷属。


「どうしても返していただけないと?」


 今度はおどしかよ。


「返さないとは言っていませんよ。返還の交渉をしたいのであればあなたたちの最高責任者である闇の女神をつれてこいと言っているだけです」


 さてどうするかね?

 まあ、抜いたらそれまでだけどな。


「御屋方様ー、こちらの方はあらかた片付きましたぞ」


「ランガーだと!?なぜ貴様がここにいる」


「む、お主はたしかナーバス? 久しいな」


「私はナバーリュアだ!」


「おーい、ご主人さまー」


「な、リシャル」


「特に大きな怪我などをしている方はおりませんでしたよ」


「こちらも問題なしじゃ」


「ルドにレーブもだと」


「ああ、久しぶりに見る顔ですね。えーとハーバーさんでしたったけ?」


「違うじゃろ、名前を間違えるとは失礼な奴じゃ」


「では彼女の名前を教えて下さいよ」


「えーと、そうじゃナーバスじゃ!」


 それさっき聞いたよ。


「私はナバーリュアだ!」


 なんだろうなこの人。

 ポンコツに絡まれて、一瞬でポンコツに仲間入りだな。



「なぜ貴様らがここにいる?」


「あなたごときに貴様呼ばわりされるいわれはありませんが。前のように消し飛ばしてあげましょうか?」


 おお、ルドが凄んだ。


「も、申し訳ない。なぜ、あなたたちがここにいるのですか? 時空の神と共にいるはずでは?」


 はやっ!

 ヘタレるのはやっ!


「簡単ですよ。今の私達の主が今あなた達が絡んでいる方だからですよ」


「な、こいつがお前達の主だと。おぶっ」


「口の聞き方に気を付けろ三下。次は斬る」


 おおう、ナバーリュアさんがぶっ飛んだ。


「ランガー、知り合いか?」


「何度か斬ったことが。たしか闇の女神の眷属だったはず」


 知り合いかって聞いたら、何度か斬った相手ですって返答こええよ。

 そしてナバーリュアさん、何度も斬られたのかー

 俺と一緒だな。


「我が主、この者がなにかしたのですか?」


「こいつがってより、こいつの部下がな」


 さっきひろった石ころを見せる。


「喧嘩売ってきたから、ぶん殴ったらこうなった。んでこの石を返せとさ」


「それでどのように答えたのですか?」


「断る。交渉したいなら女神をだせって言ってやったら、剣を抜こうとした」


「ランガー、とりあえず腕を一本」


 ナバーリュアさんの腕が落ちた。


「ランガーの斬擊でよかったですね、そのうち元に戻りますから。もし我が主の攻撃ならそこの石ころの元みたいに存在を消滅させられてますよ」


 やべえ、こいつらが逞しく見える。

 ただのポンコツ四人衆じゃなかったのか。


「ハーバーさん、今すぐ闇の女神を呼んできてください。拒否権はありません。もし来ないならまたあの時のように全てを破壊しますよ」


 ナバーリュアさんな。

 ちゃんと名前覚えてやれよ。


「わ、わかった。今すぐに」


「ああ、ついでに。あなたはあの石ころに執着しているようですが、あの石ころはもう元には戻りませんよ。あれは脱け殻というか死骸みたいなものですから」


 休眠かとおもったら、死骸だったのか。

 ナバーリュアさん、え!?って顔してるな。

 あなたなにしに来たんだろね。


 殴られて腕落とされて。

 しまいにゃ、使いっ走りか。


「ほら、早く行ってください」




 お、あの穴からなんか違うやつが出てきた。

 あいつが闇の女神様か。

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